まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2018-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト

今年のベスト本を選んでみました。正直、絞るのが難しかったです。「侯景の乱始末記」とか、アンドリッチ の短編とかも載せたかったですし、内容の是非は日本史の専門家に任せるとして、武士誕生の物語として面白い「武士の誕生を解きあかす」もよかったです…

下半期ベスト約10冊

しばらく忙しくなりそうなので、あまり新しい本は読めそうにありません。なので、ここらで一旦閉めてもいいかなという気がします。 まずは下半期のベスト本を選んでみようと思います。今年のベストはもう少し考えて見ます。 張愛玲(藤井省三訳)「傾城の恋…

島田竜登(編著)「1683年 近世世界の変容」山川出版社(歴史の転換期)

山川出版社の「歴史の転換期」も5冊目の配本となりました。タイトルの1683年はユーラシアの西ではオスマン帝国による第二次ウィーン包囲の失敗の年であり、東では鄭氏台湾が清朝に屈服し、清朝が明の残存勢力を制圧し、中国をまとめ上げた年です。本書は、こ…

小笠原弘幸「オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史」中央公論新社(中公新書)

ヨーロッパ、アジア、アフリカの三大陸にまたがる広大な領土を支配し、イスラム世界の盟主として、多民族・多宗教帝国を維持したオスマン帝国の歴史は、支配下にあった地域に様々な影響を残しました。 アナトリアというイスラム世界の辺境地帯の一君侯国から…

レオ・ペルッツ(垂野創一郎訳)「どこに転がっていくの、林檎ちゃん」筑摩書房(ちくま文庫)

第一次世界大戦中、ロシアで捕虜となっている時の不当な扱いに対する不満から、その時のロシア軍士官に復習することを誓ったオーストリア軍の将校ヴィトーリン 。彼は同じ収容所にいた仲間たちと、復讐を遂げるための計画を練り、解放されて帰った後、準備を…

イヴォ・アンドリッチ(栗原成郎訳)「宰相の象の物語」松籟社(東欧の想像力)

旧ユーゴスラビアのノーベル賞作家であり、本ブログでも感想を書いた「ドリナの橋」の著者であるイヴォ・アンドリッチの中編と短編からなる一冊が出ました。表題作の「宰相の象の物語」、短編の「シナンの僧院(テキヤ)に死す」と「絨毯」、そして中編の「…

12月の読書

12月になりました、今年ももうすぐおわりですね。 来年はどんな本が読めるのかたのしみですが、それはさておき、今月はこんな本を読んでいます。 島田竜登(編著)「1683年 近世世界の変容」山川出版社(歴史の転換期):読了 小笠原弘幸「オスマン帝国」中…

近藤和彦「近世ヨーロッパ」山川出版社(世界史リブレット)

かつてはユーラシア大陸の西の辺境の、決して豊かとは言い難い世界だったヨーロッパが、近現代においては世界の覇権を握り主導していきます。しかし。どのようにして近代に覇権を握る礎が築かれてきたのでしょうか。 本書では、1500年頃から1800年ころをヨー…

高畠純夫・齋藤貴弘・竹内一博「図説古代ギリシアの暮らし」河出書房新社

古代ギリシアの歴史というと、アテネの民主政やスパルタの国政など、ポリスの政治制度の歴史やペルシア戦争、ペロポネソス戦争といった戦争、政治的な出来事の歴史から、ポリスで暮らす人々についての社会史的な研究、さらに古代ギリシア人が様々な事象をど…

イヴォ・アンドリッチ(松谷健二訳)「ドリナの橋」恒文社

旧ユーゴスラヴィアを構成していたボスニア、そこをながれるドリナ川にかけられた石造りの橋と、橋のそばにある街ヴィシェグラード。この街と橋を舞台に、オスマン帝国大宰相ソコルル・メフメト・パシャが川に橋をかけるところから、第一次大戦のはじまりと…

桃崎有一郎「武士の起源を解きあかす」筑摩書房(ちくま新書)

武士の起源というと、かつて教科書の記述は地方から現れた武装する在地領主たちで、それが貴族にとってかわったというながれで説明され、最近では職能論的説明や、都の武官にルーツがあるなどの説明ももりこまれています。様々な研究が進み、その成果が取り…

貴堂嘉之「移民国家アメリカの歴史」岩波書店(岩波新書)

(先月読み終わっていたのですが、感想をまとめるのに時間がかかり、今月の投稿としました)アメリカというと、「移民の国」であり、様々な国や地域からやってきた人々により国が発展させられてきた、そしてあらゆる国や地域の人々に対し門戸を開いていると…

11月の読書

11月になりました。もう今年もあとわずか、果たしてどんな本を読めるのか。 とりあえず、こんな本を読んでいます。 近藤和彦「近世ヨーロッパ:」山川出版社(世界史リブレット):読了 イヴォ・アンドリッチ「ドリナの橋」恒文社:読了 アリ・スミス「両方…

小松久男(編)「1861年 改革と試練の時代」山川出版社(歴史の転換期)

山川出版社の歴史の転換期シリーズの第4回配本は、1861年というタイトルです。世界史でこの年号というと、真っ先に上がるべきものは南北戦争の勃発、ロシアの農奴解放令、イタリア王国の成立でしょう。その他、地味な事柄をあげると太平天国の乱が終盤に向か…

アーサー・フェリル(鈴木主税・石原正毅訳)「戦争の起源」筑摩書房(ちくま学芸文庫)

人類が登場してある程度の段階に入ると多くの地域で戦争が起きていた痕跡が見られるようになる出来事です。武器で傷を負った人骨、明らかに人為的にはもののようなもので傷をつけられた痕跡、鏃が刺さった骨といったものから、焼き払われた痕跡のある集落ま…

10月の読書

10月になりましたが、こういう本を読んでいます。 小松久男(編)「1861年 改革と試練の時代」山川出版社(歴史の転換期):読了 貴堂嘉之「移民国家アメリカの歴史」岩波書店(岩波新書):読了 アーサー・フェリル「戦争の起源」筑摩書房(ちくま学芸文庫…

小松久男「近代中央アジアの群像」山川出版社(世界史リブレット人)

近代中央アジアというと、漫画の「乙嫁語」の舞台として知っている人もいるでしょう(漫画の時代設定としては、おそらくこの本で扱う時代よりも前だと思いますが)。また、世界史の授業ではウズベク族の3ハン国とか習ったなと思い出す人もいるかもしれません…

比佐篤「貨幣が語るローマ帝国史」中央公論新社(中公新書)

共和政の時代から帝政の時代まで、ローマ帝国では数多くのコインが作られてきました。それは今では博物館に展示されていたり、コレクターが収集・所蔵していますし、時折古代ローマ時代のコインが発見されたというニュースが入ってくることもあります。 こう…

島田竜登(編)「1789年 自由を求める時代」山川出版社(歴史の転換期)

山川出版社の歴史の転換期シリーズの第3回配本は、1789年というタイトルです。このタイトルを見た瞬間に、多くの人がこれはフランス革命とそれがその後の世界に与えた影響であったり、ヨーロッパ近代の話が多くなると思うかもしれません。しかし、本書の構成…

森田安一「ルター」山川出版社(世界史リブレット人)

ドイツで宗教改革が16世紀に起こり、それがきっかけでヨーロッパのあり方は大きく変化していきました。この動きはヴィッテンベルク大学の聖書学教授であったルターが、免罪符販売に対し「95か条の論題」を張り出したことがきっかけであったと言われています…

9月の読書

9月はこのような本を読んでいます。今月は、先月から読んでいた本、いつも紹介することにしているシリーズなど、いろいろあり、感想文も多くなっています。そしてまだ読み終わっていないプリンチーぺの錬金術本もある。 小松久男「近代中央アジアの群像」山…

ジョゼ・ルイス・ペイショット(木下眞穂訳)「ガルヴェイアスの犬」新潮社

1984年1月、ポルトガルのガルヴェイアスという村に宇宙から謎の物体が落下してきます。落下とともに爆発が起き、村人たちは落ちた直後は現場を見て何事があったのか確認します。しかし、村人達は何があったのかも忘れ、何もなかったかのように日常生活へと復…

蔀勇造「物語アラビアの歴史」中央公論新社(中公新書)

アラビアの歴史、というとどのあたりの時代をイメージするでしょうか。現代の複雑な中東情勢を思い浮かべる人もいると思いますし、近代の英仏の進出とのかかわり、第一次大戦中のアラブの反乱といったあたりが出て来る人もいると思います。そして、ムハンマ…

8月の読書

8月になりました。8月はこのような本を読んでいます。 蔀先生の本は実は先月に買って、先月末というか今月頭に読み終わったものを感想書いています。 あと、今読んでいる「ペルぺトゥアの殉教」ですが、カルタゴの人身御供のくだりをよんでいると、非常に…

ヤマザキマリ「オリンピア・キュクロス1」集英社

2020年、真夏の東京でオリンピックが開かれることになっており、開催に向け急ピッチで準備作業を進めているようです。はたして今度のオリンピックがどうなるのかはわからないですが、いまから54年前、1964年の東京オリンピックは戦後日本の復興、高度成長の…

張愛玲(藤井省三訳)「傾城の恋/封鎖」光文社(古典新訳文庫)

上海の落ちぶれた名家の出戻り令嬢と、海外で財を築き上げた華僑のプレイボーイの恋の駆け引きと、その顛末を描いた表題作「傾城の恋」、上海の路面電車の車中で突如繰り広げられた泡沫の夢のような男女の恋愛を描いた「封鎖」の2作品と、太平洋戦争勃発直後…

南川高志(編著)「378年 失われた古代帝国の秩序」山川出版社(歴史の転換期)

378年、この年のローマ帝国はアドリアノープルの戦いでゴート人に大敗、皇帝は戦死という惨憺たる有様でした。そしてこれ以降、帝国は統治能力を失っていき、東西に分裂したあと帝国西部はゲルマン人国家の分立と西ローマ帝国の滅亡という事態に至ります。 …

7月の読書

7月になりました。今年も半分終わってしまいました。それにしての、梅雨が関東でもう開けたというのは信じられないぐらい早いです。これでだいじょうぶなんでしょうかねえ。 リチャード・フラナガン「奥のほそ道」白水社:読書中 甘耀明「冬将軍が来た夏」白…

上半期ベスト約10冊

2018年上半期のベスト本をえらんでみました。順不同です。 吉武純夫「ギリシア悲劇と「美しい死」」 秋山晋吾「姦通裁判」 ヨーゼフ・ロート「ラデツキー行進曲」 メアリー・ビアード「SPQR ローマ帝国史」 Peter Thonemann 「The Hellenistic Age」 ジ…

ヨーゼフ・ロート(平田達治訳)「ラデツキー行進曲(上下)」岩波書店(岩波文庫)

「ラデツキー行進曲」というと、ラデツキー将軍のサルデーニャに対する勝利を記念して作曲され、その軽快な響きは日本でも色々な場面で使われています(NHK Eテレの番組間の繋ぎでも使っていますね)。また、いまでもオーストリアの行事や式典でよく演奏され…