まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2015-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト10冊

2015年もそろそろ終わりです。今年読んだ本のなかからベスト本1011冊を選びました。選ばれたのは次の本です(シリーズ物、連続物を全部読み通した場合はそれで1冊とします)。 *一冊載せようと思って忘れていたものを入れたら、増えてしまいました。でもめ…

海老沢哲雄「マルコ・ポーロ」山川出版社(世界史リブレット人)

昨今、実在しているのかどうか疑う人もいるマルコ・ポーロですが、世界史リブレット人のシリーズから彼についての本がでるということで、どのような本にな るのか気にはなっていました。全体的な内容としては、マルコ・ポーロがあまり旅先での暮らしだとか旅…

南川高志「ユリアヌス」山川出版社(世界史リブレット人)

ユリアヌスというと、辻邦生「背教者ユリアヌス」を読んだことがある人はいるかと思います。キリスト教が勢いを増す中で古代の伝統信仰復活を試みた皇帝と して紹介されることが多い人物であり、幼い時から死ぬ時まで、様々な苦難に見舞われてきた人生のよう…

澤井一彰「オスマン朝の食糧危機と穀物供給」山川出版社

16世紀後半、最盛期を迎えていたオスマン帝国ですが、帝国領内では食糧不安、食糧危機が度々起こっていました。そして食糧不安や危機はオスマン帝国に限ったことでなくイタリアやスペインなど当時の地中海世界では度々見られた現象でした。 本書では16世紀…

12月の読書

今年も最後の月に突入しました。今月はこういう本を読んでいます。 今月は塩野七生「ギリシア人の物語」がでましたが、個人的には、昔の本と比べてなんといいますか、あまり面白くないなあという感想を抱きました。もともと、歴史を描くのではなく、歴史上の…

レオ・ペルッツ(垂野創一郎訳)「聖ペテロの雪」国書刊行会

物語は、医師アムベルクが大怪我の昏睡状態から目覚めるところから始まります。少しずつ何があったのか記憶を取り戻しながら、その時に彼の記憶と周りから 言われたことに大きな食い違いが生じていることが判明します。彼の記憶では5週間前にモルヴェーテへ…

鶴島博和「バイユーの綴織(タピストリ)を読む」山川出版社

ノルマンディー公ウィリアムがブリテン島に上陸してイングランド王となる「ノルマン・コンケスト」、その出来事自体は世界史でも必ず出てきます。イギリス 史の転換点の一つであり、重要な出来事ではありますが、それと同時にこの出来事は文献史料だけでなく…

11月の読書

11月はこういう本を読んでいます。今月はなんかあまり読書ペースが上がりませんが、いろいろありまして。 それはさておき、丸善で塩野七生「ギリシア人の物語1 民主政のはじまり」が12月18日発売予定というポスターがはってありました。いまのところ丸善し…

長堀祐造「陳独秀」山川出版社(世界史リブレット人)

陳独秀というと、世界史の教科書では新文化運動の中心メンバーであったということ、そして中国共産党の結成といったことで名前が出てきます。しかし、どう いう背景があって新文化運動に関わるようになっていったのか、そして中国共産党結成に関わった彼が後…

桑野栄治「李成桂」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史リブレットから、李朝朝鮮王国の建国者李成桂を扱った一冊が出ました。本書では李成桂の一族の由来、高麗末期の東アジア情勢とその中での高麗の政治 の動き、そして建国後に発生した骨肉の争いといった内容がコンパクトにまとめられています。そのなか…

藤村シシン「古代ギリシャのリアル」実業之日本社

古代ギリシアというと、青い海、青い空をバックにした白亜の大神殿というイメージが非常に強烈にあるかと思います。現在のアテネ市の写真として、青空を背 景にしたパルテノン神殿という構図は確かに印象的ではあります。しかし、そのパルテノン神殿が実は日…

ミュリエル・スパーク(木村政則訳)「ブロディ先生の青春」河出書房新社

昔々、第2次世界大戦前、イギリスのある女子校にブロディ先生という先生がいました。彼女の展開する授業は勤務先の学校の校風とは随分違うものでした。それゆえに周りの先生からはあまりよく思われず、校長はなんとかして彼女を学校から追い出そうとしてい…

10月の読書

10月になりました。9月はドラクエ8に時間を取られすぎ、あまり本を読めませんでしたが、10月はどうなりますかね。 イアン・ドースチャー「もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら まこと新たなる希望なり」講談社:読了 平山優「真田信繁」KADO…

河江肖剰「ピラミッド・タウンを発掘する」新潮社

クフ王、カフラー王、メンカウラー王の残したギザの3大ピラミッドというと、エジプトをあつかう書籍では必ず写真も出てきますし、エジプトのイメージとし て強烈に刷り込まれている人も多いと思います。そして、巨大なピラミッドをめぐっては様々な学問的論…

沢田勲「冒頓単于」山川出版社(世界史リブレット人)

騎馬遊牧民の歴史を扱う時、現在のモンゴル高原を中心に強大な勢力を誇った匈奴に関しては必ず触れられます。特に匈奴の勢力を強めた冒頓単于については単 于の地位につくまでの物語や、攻め込んできた劉邦を包囲し追い詰めた話は世界史でも小話的な形で触れ…

田中比呂志「袁世凱」山川出版社(世界史リブレット人)

袁世凱というと、あまり良いイメージを持たれていないようです。特に、戊戌政変のときの対応や、辛亥革命とその後の展開は悪いイメージを持たせるには十分ではないかと思います。しかし、果たして彼に対するイメージは正しいのか? 本書では、袁世凱の生涯を…

9月の読書

9月に入りました。9月はこういう本を読んでいます。 ついついゲームにはまり込み、読書ペースは著しく低下し、このような状況に。 ヤマザキマリ/とり・みき「プリニウス 3」新潮社:読了 犬童千絵「碧いホルスの瞳 1」エンターブレイン:読了 河江肖剰…

レオ・ペルッツ(垂野創一郎訳)「夜毎に石の橋の下で」国書刊行会

ルドルフ2世が神聖ローマ皇帝だった時代のプラハ、ユダヤ人街で疫病が流行します。その原因を突き止めようとしたところ、姦通の罪に対する神の怒りである という子供の霊のお告げがありました。それを聞いたユダヤ教のラビは人々を集めて罪を犯したものに名…

トーマス・セドラチェク(村井章子訳)「善と悪の経済学」東洋経済新報社

経済学、というと数式だらけというイメージがなぜか浮かんできますし、実際に経済学関係の本を見ると、これは数学や物理の本ではないかと言いたくなるもの もあります。経済的合理性を追求し、合理的判断を下すような人間モデルを設定して考えていくのが主流…

レオ・ペルッツ(前川道介訳)「第三の魔弾」白水社

コロンブスが新大陸に到達したあと、スペインによる新大陸征服が進み、中南米を中心に広大なスペイン植民地が形成されます。植民地化においてコンキスタ ドールとよばれる人々が黄金を求め、新大陸にあった先住民の国家を征服していきました。ピサロによるイ…

杉山清彦「大清帝国の形成と八旗制」名古屋大学出版会

16世紀後半、交易ブームにわく東アジア、東北アジアにおいて女真族がヌルハチの元で統合され、ついには東アジアの大部分を支配領域に置く大清帝国(清朝)が成立します。大清帝国の根幹をなすしくみとしては、八旗と呼ばれる社会制度・軍事制度の存在が挙げ…

8月の読書

8月はこのような本を読んでいます。 暑いので、かなりペースは落ちそうですが。 フェルドウスィー「王書」岩波書店(岩波文庫):読了 東田雅博「シノワズリーか、ジャポニスムか」中央公論新社(中公新書):読了 ガブリエル・ガルシア=マルケス「族長の…

ポリュビオス(城江良和訳)「歴史1〜4」京都大学学術出版会(西洋古典叢書)

古代ローマ史について勉強すると、ローマの国制について、混合政体という考え方が出てくることがあります。またギリシア人の歴史認識について政体循環論という考え方が取り上げられることがあります。 このような論の根拠としてとりあげられるのがポリュビオ…

7月の読書

えらい遅くなってしまいましたが、7月の読書状況はこんな感じです。 伊高浩昭「チェ・ゲバラ」中央公論新社(中公新書):読了 ヴァーノン・リー「教皇ヒュアキントス」国書刊行会:読了 ブリア-サヴァラン「美味礼讃(上下)」岩波書店(岩波文庫):読了 …

小泉徹「クロムウェル」山川出版社(世界史リブレット人)

17世紀半ばから後半のイギリスにおいて、一時王政が中断し共和政になった時期がありました。この時期に権力を握っていたのが護国卿の地位についたクロム ウェルで、彼についての評価は毀誉褒貶が非常に激しいものがあります。そもそも彼が議会派の一員として…

佐藤文俊「李自成」山川出版社(世界史リブレット人)

明末に出現した流賊たちのなかから台頭して明を滅ぼし、一瞬ではありますが大順王朝を樹立した李自成の伝記が出ました。李自成だけで1冊の本が出るとは 思ってもいませんでしたが、内容としてはまず明の大まかな説明、李自成を生み出した陝西北部の状況、流…

レオ・ペルッツ(垂野創一郎訳)「スウェーデンの騎士」国書刊行会

時代はカール12世の時代、軍を離れてスウェーデン王のもとへと急ぐ貴族と泥棒がひょんな事から出会い、しばしともに行動します。しかし貴族から代父のも とへの言伝を頼まれた泥棒は、そこで出会った娘に心を奪われ、さらに領地の惨状を目にしたことで領地を…

イェルク・ムート(大木毅訳)「コマンド・カルチャー」中央公論新社

昔、世界に2種類のタイプの学校がありました。一つは上級生による極めて理不尽な下級生しごきが横行し、カリキュラムもおよそ本来その学校で求められてい ることとは遠い内容に重点が置かれ、指導も画一的というきわめて硬直化した学校で、こちらでは学校で…

プルタルコス(城江良和訳)「英雄伝4」京都大学学術出版会(西洋古典叢書)

古代ローマにおいて、「モラリア(倫理論集)」において様々な随想を残したプルタルコスの最も有名な作品というと、「英雄伝(対比列伝)」ではないでしょうか。しかし全訳は品切れ重版未定の状態の岩波文庫しかありません。その岩波文庫版も、旧かな・旧漢…

6月の読書

6月になりました。 今月はこういう感じで本を読んでいます。 佐藤文俊「李自成」山川出版社(世界史リブレット人):読了 イェルク・ムート「コマンド・カルチャー」中央公論新社:読了 レオ・ペルッツ「スウェーデンの騎士」国書刊行会:読了 清水和裕「イ…