まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

このブログについて。

いままで、サイト開設から2007年10月20日で4年目にはいったサイトHistoriaで読書コーナーを設け、その間に歴史関係の書籍を中心に色々な本を読み散らかして、紹介・感想を書いてきました(中にはあまり内容を覚えていない本もあったりしますが)。過去4年…

小林亮介「近代チベット政治外交史」名古屋大学出版会

チベットというと、かつてこの地を支配したダライ=ラマの政権は国外に亡命し、中華人民共和国の自治区であるが、仏教の活仏の選定にも中国政府の影響がおよぶなど、中国の領土の一部」としての支配強化が長年にわたり着々と進められている状況です。共産党…

4月の読書

4月になりました。今月は色々と欲しい本が出ます。アジア人物史の12巻、そして選書メチエから出始める地中海世界の歴史2冊(オリエントで2冊)、そのほかにも色々と。 その前に読んでおきたいものもあります。 マシュー・スチュワート「マネジメント神話」明…

馬伯庸(齊藤正高・泊功訳)「両京十五日 Ⅱ 天命」早川書房

北京から南京への遷都のため送られてきた皇太子が命を狙われ、さらに北京の皇帝も危ない状態になるなか、皇太子が北京を目指す「両京十五日」、1巻が非常に面白く次を楽しみにしていました。それが無事刊行され、早速読みました。この巻では、皇位をめぐる明…

渡辺信一郎「増補 天空の玉座 中国古代帝国の朝政と儀礼」法藏館(法蔵館文庫)

中国というと皇帝による専制国家、という理解は多くの人にも広まっているものだと思います。しかし、専制政治をいかにして成り立たせるのか、そのしくみについてまではあまり深く考えていない、単に皇帝が独裁的に好き勝手に決めているという程度の理解の人…

姜尚中(総監修)「アジア人物史9 激動の国家建設」集英社

アジア人物史も残すところわずか、今回の9巻は近代国家建設や民族運動に関連する項目が多くなっています。最初に「東学」を生み出した崔済愚と高宗をとりあげたあと、様々な地域を見ていくという感じです。 内容を見ると、パン=イスラム主義で有名なアフガ…

3月の読書

3月になりました。3月は次のような本を読んでいます 山内進「掠奪の法観念史」東京大学出版会:読了 馬伯庸(齊藤正高・泊功訳)「両京十五日 Ⅱ 天明」早川書房:読了 渡辺信一郎「増補版 天空の玉座」法蔵館(法蔵館文庫):読了 姜尚中(総監修)「アジア…

馬伯庸(齊藤正高・泊功訳)「両京十五日 Ⅰ 凶兆」早川書房

時は明朝、4代目皇帝の治世、皇太子朱瞻基(のちの宣徳帝)が南京へと派遣されてきました。皇帝の意図は永楽帝が北京に移した都をまた南京に戻そうというものであり、そのために朱瞻基が派遣されてきます。しかし南京に到着したとき、彼を乗せた宝船が爆破さ…

ジェイムズ・ポスケット(水谷淳訳)「科学文明の起源」東洋経済新報

科学の歴史というと、前近代には中国など非ヨーロッパ圏での成果が多く取り上げられますが、ある時期からヨーロッパ中心になっていきます。特に近代科学ともなると、「科学革命」あたりからはもっぱらヨーロッパ(そしてアメリカ)の話題が中心となっていき…

堀地明「清代北京の首都社会 食糧・火災・治安」九州大学出版会

清朝の首都北京、そこは皇帝や王族、官僚、八旗の構成員だけでなく多くの人が暮らす大都市です。そんな大都市でどのようにして人々に食糧を安定供給していたのか。また、洪水などの災害や都市では避けられない火災、そして犯罪の発生といった問題もあるわけ…

2月の読書

2月になりました。 今月はこんな感じの本を読んでいます。先月からちまちま読んでいる洋書はまだ読み終わる気配なしですが。 アヴラム・デヴィッドソン「エステルハージ博士の事件簿」河出書房新社(河出文庫):読了 小野昭「ドナウの考古学」吉川弘文館:…

山舩晃太郎「沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う」新潮社(新潮文庫)

日本史でも元寇の沈没船が発見されたことが過去ニュースにも取り上げられていましたが、海に沈む沈没船から様々なものが発見され、それによって歴史の一端が明らかになることがあります。地中海の古代ギリシアの沈没船から見つかったアンフォラが当時の経済…

シオドラ・ゴス(鈴木潤訳)「メアリ・ジキルと囚われのシャーロック・ホームズ」早川書房

ジキルとハイドの話やフランケンシュタインなど様々な物語に登場するマッドサイエンティストたち、その娘たちがクラブを結成し謎を解き明かす、「アテナ・クラブ」シリーズの完結編がでました。前作でシャーロック・ホームズが失踪、さらに終盤にはメアリの…

1月の読書

明けましておめでとうございます。 1月はこのような本を読んでいます(洋書はそんな早く読めないので、今月読み終わるとは思えないですが)。昔読んだ本が文庫化され、それを改めて読んだものもあります(それにしても、なぜよその出版社で文庫になったのか…

今年のベスト

そして、こちらで今年のベスト本約10冊をまとめようと思います。 正直言って難しいですが10冊に絞ります。 泣く泣く削ったバート・ホールの火器の誕生の本とか、ローラン・ビネやキム・イファン、ニー・ヴォ、マギー・オファーレルの小説、諫早先生の馬の本…

下半期ベスト

下半期は正直なところ、あまりまともに読めなかった時があったりします。 でもある程度は読んだのでそこから下半期のベストをまず選びます。 2023年のベストはもうそろそろだします。 そして、アップしてから気がつきましたが、2冊既に上半期でアップした物…

姜尚中(総監修)「アジア人物史6 ポスト・モンゴル時代の陸と海」集英社

アジア人物史6巻は、モンゴル帝国によるユーラシア統合が終わりを迎えた後、ユーラシア各地でみられた国家の形成、宗教の伝播、交易ネットワークの展開を扱います。かつてモンゴル帝国が存在した世界で海と陸のネットワークが結びつきました。そのつながりは…

荒川正晴ほか(編)「岩波講座世界歴史2 古代西アジアとギリシア」岩波書店

(読了は11月30日) 岩波講座世界歴史の新シリーズがで始めたのが2年前のこと、そこからコンスタントに刊行が進み、全24巻がこの度出揃いました。実のところ最初に出た第1巻が目次みた時点で興味が湧いて来ず(今も無い)、このシリーズはどうしたものかと迷…

12月の読書

12月になりました。今年も後少しで終わりです。年末には下半期ベスト、そして年間ベストを選ぼうと思いますがはたしてどうなるか。 それはさておき12月はこのようなほんをよんでいます。 五十嵐ジャンヌ「洞窟壁画考」青土社:読了 塩野七生「ギリシア人の物…

岩﨑周一「マリア・テレジアとハプスブルク帝国」創元社

ハプスブルク君主国のマリア・テレジアというと世界史では18世紀中欧・東欧の歴史を語る際に欠かせない人物です。しかし、彼女の治世は単純化して示せる何かわかりやすい特徴があるかというとそういうものではないようです。改革を進める一方で保守的なとこ…

姜尚中(総監修)「アジア人物史5 モンゴル帝国のユーラシア統一」集英社

集英社のアジア人物史シリーズも残すところは少なくなってきました。第5巻では前近代ユーラシア史のハイライトといってもよい、モンゴル帝国の時代が描かれます。チンギス・カンによるモンゴル帝国樹立、そしてその後のモンゴル帝国の拡大過程、クビライの業…

川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」河出書房新社(河出文庫)

”かつて、1950年代から70年代のアメリカにジュリアン・バトラーと言う作家がいた。同性どうしの性行為や同性愛が処罰の対象となる時代において、男性同士の愛を描いた作品を発表した。女装を好み、過激な発言を繰り返し、カルト的な人気を得た。” しかし、こ…

11月の読書

11月になりました。先月は正直まともに読めず感想もとくに書こうという意欲も湧かず(いや、面白いと思ったんですがね、自分で感想書かなくてもいいかなとふと思ったので。どちらも手に取りやすいし)。 今月は先月末に入手した本をまず読んでからかな。とい…

10月の読書

10月はこのような本を読んでいます。 先月読んでまだ感想を書けていない本が実はありますが、それについてはどうするか検討中です、とかいたものの、結局書く気力も出ず。また10月に読んだ本は特に感想は書かなくていいかとおもいました。別に自分が書かなく…

西田祐子「唐帝国の統治体制と「羈縻」」山川出版社

様々な史料を読み解き、それをもとに歴史を書くというのが歴史の研究・記述において行われていることですが、その史料が果たしてどこまで同時代の認識を反映しているのかというのは常に気になるところです。同時代史料であっても、それがごく一部の変わり者…

平田陽一郎「隋 「流星王朝」の光芒」中央公論新社(中公新書)

中央公論新社で中国の各王朝ごとの巻が結構出ています。今年の春には「唐」がでて、東部ユーラシアの帝国としての唐の歴史をまとめており非常に面白く,此方にも感想を書いています。そして、今回は唐の前の隋で一冊の本が出ました。隋のような短命な王朝で1…

姜尚中(総監修)「アジア人物史3 ユーラシア東西ふたつの帝国」集英社

人物を通じてアジアの歴史を見る「アジア人物史」シリーズの第3巻が出ました。刊行ペースが少しゆっくりに成、2ヶ月に1冊くらいのペースになってきています(予定通りのようですが)。この巻では6世紀から11世紀頃というはばで、唐とイスラム帝国が栄えた時…

小野寺拓也・田野大輔「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」岩波書店

SNSの発達によりいろいろな人が言いたいことを言いやすい環境ができあがっていくなか、世間で言われていることとはちょっと違うことをいうと人目を引きやすいことは多いようです。とくに「〜の真実」「本当の〜」等と銘打って本を出すと、それを見てその通り…

9月の読書

もう秋になりました。読書の秋とは言いますが忙しいとなかなか進みませんね。 9月はこんな本を読んでいます。なお8月に読んで感想を書ききれずたまっているため、それを書いた後で9月の本については感想を書くかなと。 石田真衣「民衆たちの嘆願」大阪大…

三佐川亮宏「オットー大帝ー辺境の戦士から「神聖ローマ帝国」樹立者へ」中央公論新社(中公新書)

オットー大帝(オットー1世)というと、世界史では神聖ローマ帝国の初代皇帝と言うことでその名が出てくる人物です。レヒフェルトの戦いでマジャール人(なお、本書では自称であるマジャール人ではなく史料の記述に従いハンガリー人として表記しています)を…