まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2014-01-01から1年間の記事一覧

絲山秋子「離陸」文芸春秋社

主人公は国土交通省の若手キャリア、物語当初は矢木沢ダムに勤務しています。そんな彼の目の前に突如として現れたイルベールというフランス人、彼が主人公 に依頼したこともかなり突飛なことでした。その依頼とは主人公の元彼女、「女優」乃緒を探して欲しい…

今年のベスト10冊

少し早いのですが今年のベスト10冊はこれらの本にしました。 今読んでいるミハル・アイヴァス「黄金時代」が面白いのですが、どうも年内に読み終わりそうにないので、ここには入れられそうにないですので、これで決定ですね。再読本は入れない方針なので、森…

久保一之「ティムール」山川出版社(世界史リブレット人)

草原とオアシス、そして砂漠の中央ユーラシア、ここは騎馬遊牧民が強力な軍事力を背景に大帝国を築いていた世界でした。とくに13世紀に出現したモンゴル 帝国はユーラシアの大部分を支配下に置き、世界の「一体化」をすすめた勢力でした。そのモンゴル帝国が…

富田健次「ホメイニー」山川出版社(世界史リブレット人)

今の若い人達にはほとんど分からないとおもいますが、アメリカのことを「大悪魔」とよんで糾弾した人がいました。またサルマン・ラシュディの「悪魔の詩」という作品でイスラムが悪く書かれているとしてこれを批判し、著者のラシュディに対して処刑を呼びか…

(再読)森谷公俊「王宮炎上 アレクサンドロス大王とペルセポリス」吉川弘文館

アケメネス朝ペルシアのダレイオス1世が建設を開始したペルセポリス、その遺跡に残るアパダーナの浮彫や列柱の写真をどこかで見たことがある人はいるので はないでしょうか。この巨大な王宮を焼き払ったのがアレクサンドロス大王で、それ故に現代のイランで…

コルム・トビーン(栩木伸明訳)「マリアが語り遺したこと」新潮社(新潮クレストブックス)

年老いた、もうすぐで寿命が尽きそうな女性のもとに2人の男が訪ねてきます。そし彼女に対して色々と質問をして、それを元に何かを描きたいようです。しか し彼女は彼らが望むようなことは一切答えず、そのことが原因で彼らの間には緊張状態が生じています。…

(再読)森谷公俊「アレクサンドロス大王 「世界征服者」の虚像と実像」講談社(選書メチエ)

アレクサンドロス大王は東方遠征を開始してまたたくまに大国アケメネス朝ペルシアを征服し、当時としては未曾有の征服を成し遂げ、33才になる直前に死去 するという短くも激しい生涯は後の世の多くの人々を惹きつけ、様々なアレクサンドロス像が語られるよう…

12月の読書

いよいよ今年も今月を残すのみとなりました。 12月はこう言う本を読んでいます。 久保一之「ティムール」山川出版社:読了 富田健次「ホメイニー」山川出版社:読了 絲山秋子「離陸」文芸春秋社:読了 ユリイカ臨時増刊号「岩明均」青土社:読了 佐藤賢一「…

浦沢直樹・長崎尚志「MASTERキートン Reマスター」小学館

今から20年以上前に描かれた「MASTERキートン」、かつてはSAS所属、今は探偵業、保険会社の調査員をしている考古学徒を主人公とし、主人公を巡 る人間ドラマと考古学や歴史学、そして連載当時が冷戦末期および終結直後だったこともありそのころの国際情勢も…

周藤芳幸「ナイル世界のヘレニズム エジプトとギリシアの遭遇」名古屋大学出版会

西洋の歴史において、ヘレニズム時代は「グローバル化」を迎えた時代としてとらえることができると思います。ギリシア人が活動する範囲はこれまで以上に拡 大していきました。では、長きにわたり一つにまとまった文明をつくってきたエジプトにおいてはどのよ…

絲山秋子「海の仙人」新潮社(新潮文庫)

宝くじで3億円をあてたのをきっかけに、主人公の河野は会社を辞めて敦賀に引越した。とりあえずアパート経営をしながら釣りをしたり、ヤドカリを飼育したりしながら過ごすかれのもとに居候を志願する神様・ファンタジーが現れます。 そこからなぜか神様と同…

11月の読書

11月になりました。今年もあとわずかですね。 11月はこんな感じで本を読んでいます。 浦沢直樹・長崎尚志「MASTERキートン Reマスター」小学館:読了 シリトー「長距離走者の孤独」新潮社(新潮文庫):表題作のみ読了 周藤芳幸「古代ギリシア 地中海への展…

小沼孝博「清と中央アジア草原 遊牧民の世界から帝国の辺境へ」東京大学出版会

中央ユーラシアの遊牧民の持つ軍事力は前近代において周辺の定住民に対して圧倒的に有利であり、それを駆使して大帝国を建設した勢力としてはモンゴルなど があります。中央ユーラシアの歴史において遊牧民が中心的な存在であった時代はジューンガルの征服で…

青木道彦「エリザベス女王」山川出版社(世界史リブレット人)

テューダー朝のエリザベス1世の時代というと、世界史の教科書ではイギリス絶対王政の時代として取り上げられてきたことでよく知っている人もいるのではな いでしょうか。当時の最強国家スペインをアルマダ海戦で破り、イギリスがこれ以後発展していったとい…

高野大輔「マンスール」山川出版社(世界史リブレット人)

7世紀に成立したイスラムはその後急速に勢力を拡大し、支配領域も拡大していきます。そんななかでイスラム世界の指導者カリフの位は信者の選挙から王朝的な継承へと変わっていきました。本書ではアッバース朝の事実上の開祖であるマンスールを取り上げていま…

10月の読書

10月になりましたね。今年も残り少なくなってきましたが、頑張っていきましょう。 10月はこう言う本を読んでいます 青木道彦「エリザベス女王」山川出版社(世界史リブレット人):読了 高野大輔「マンスール」山川出版社(世界史リブレット人):読了 小沼…

Hugh Bowden 「Alexander the Great :a very short intorduction」Oxford Univ.Press

オックスフォード大学出版局から、Very Short Introductionsというシリーズが出ています。日本で言えば岩波新書とか中公新書のようなものでしょうか。扱われているテーマもいろいろあり、 歴史、政治、宗教、哲学、科学、時事問題、芸術、文化など多岐にわた…

ローレンス・M・プリンチペ( 菅谷 暁・山田 俊弘訳)「科学革命」丸善出版(サイエンス・パレット)

16世紀、17世紀(近世、初期近代)のヨーロッパでは科学史上重要な発見が相次ぎ、「科学革命」という言葉が使われることが良く見受けられます。天文に 関してコペルニクス、ガリレオ、ティコ=ブラーエ、ケプラーといった人々の業績が有名ですし、その他医学…

9月の読書

もう秋ですね。9月はこう言う本を読んでいます。 Hugh Bowden Alexander the Great Oxford Univ.Press:読了 バーブル「バーブル・ナーマ1」平凡社(東洋文庫):読了 ローレンス・M・プリンチペ「科学革命」丸善出版(サイエンス・パレット):読了 パト…

池谷文夫「ウルバヌス2世と十字軍」山川出版社(世界史リブレット人)

ローマ教皇ウルバヌス2世というと、十字軍について扱うときには欠かすことのできない人物です。彼が十字軍を呼びかけたことが、2世紀にわたり地中海東部を舞台に展開された十字軍運動の始まりとなり、十字軍運動は武力衝突のみならず巡礼、交易など人の移動…

高畠純夫「古代ギリシアの思想家たち」山川出版社(世界史リブレット人)

古代ギリシアの思想家たちの思想はどのような状況で形成されていったのか。アンティフォンとソクラテスの2人を軸にして、彼らが登場する前の思想家および知の伝え方についてまとめ、さらにアンティフォンとソクラテスの生涯の概略と、かれらの知的活動、そし…

8月の読書

8月はこのような本を読んでいます。 7月は何故か知らないけれどもえらいハイペースで色々と読んでしまいましたが、はたしてどうなりますか。 米澤穂信(編)「世界堂書店」文芸春秋社(文春文庫):読了 宇佐美文理「中国絵画入門」岩波書店(岩波新書):読…

平山優「長篠合戦と武田勝頼」吉川弘文館

(注)本書はもっと前に読んだ本ですが、7月に「検証長篠合戦」がでるということで、まとめて7月に感想をアップすることにしていました。 長篠合戦というと、どのようなイメージを持つでしょうか。多くの人は織田信長が3000丁の鉄砲を用いて武田の騎馬隊を打…

平山優「検証長篠合戦」吉川弘文館

長篠合戦や武田勝頼、そして織田に関する世間に流布する諸々の説は果たして妥当なのか、今 一度史料に立ち返り再検討を加えていく本として、このブログで取り上げている「長篠合戦と武田勝頼」があります。しかし、まだ論点となる事柄がいくつか 残っており…

ティモシー・スナイダー(池田年穂訳)「赤い大公 ハプスブルク家と東欧の20世紀」慶應義塾大学出版会

ウクライナ王になろうとして策謀を巡らしたり、ナチスへの接近と寝返り、そしてソ連に捕ら えられ獄死するという壮絶な人生をたどった本書の主人公ヴィルヘルム・フォン・ハプスブルク、彼は中欧に長らく存在したハプスブルク君主国の皇族の一人に して、ヒ…

7月の読書

7月はこう言う本を読んでいます。なお、お薦めに「長篠合戦と武田勝頼」をのせていますが、もっと前に読んだ本です。しかし「検証長篠合戦」がでたので、それとセットで取り上げてみました。 あと、昨年12月のお薦めにのせた「図説アレクサンドロス大王」に…

深澤秀男「西太后」山川出版社(世界史リブレット人)

清朝末期の権力者として長きにわたり君臨した西太后。彼女については様々な評価が見られます。海軍の費用を離宮改修に回すなどの浪費により清朝を滅亡に追いやった張本人、あるいは内憂外患に見舞われた清朝を半世紀に渡支えた女傑、そのような評価が見られ…

国本伊代「ビリャとサパタ」山川出版社(世界史リブレット人)

20世紀前半におきたメキシコ革命については、ディアスの独裁体制が打倒され、その後大統領となった自由主義者のマデロもウェルタのクーデタにより斃れるが、護憲派勢力がウェルタを打倒することになります。しかし護憲派勢力の内部でも対立が起こり、カラン…

(再読)森谷公俊「アレクサンドロスの征服と神話」講談社

このブログを開設する以前に読んだ本で2007年のベスト本にいれ、自分のサイトでも内容紹介を書いたものですが、最近こちらのブログで紹介されているのをみかけ、久し振りに読み直してみたくなって読んでみました。なので、感想は昔書いた物の焼き直しのよう…

板橋拓己「アデナウアー 現代ドイツを創った政治家」中央公論新社(中公新書)

第2次世界大戦により国土は荒廃、東西に分裂したドイツにおいて、西ドイツの初代首相として西ドイツの国際社会への復帰、復興を進めたアデナウアーは国内でも非常に高い人気を誇る人物のようです。そんなアデナウアーについての評伝です。 本書ではアデナウ…