まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2020-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト約10冊

もう仕事納めにしたので、今年のベストも決めようと思います。今年は前半はコロナ関係で本をやたらと注文して買って読み、それがことごとく面白かったのでベスト選びに困り、後半は一転して読書ペースがおちたりしました。 ベストを約10冊という適当な括りで…

下半期ベスト約10冊

下半期ベストはこのようなラインナップになりました。年間ベストはそろそろ決めます。 窪添慶文「北魏史」東方書店(東方選書)ピーター・フランコパン(須川綾子訳)「シルクロード全史 文明と欲望の十字路(上)(下)」河出書房新社澤田典子「よみがえる天…

窪添慶文「北魏史 洛陽遷都の前と後」東方書店(東方選書)

通史、概説の類いというと、序文はさておき内容的には大体時代順になるような構成を取る本が多いかとおもいます。歴史書籍の構成として古い時代から順番に新しい時代まで描いていくほうが、時間の流れとも合致するのでわかりやすいのでしょう。そのため、意…

Joseph Roisman 「Alexander’s Veterans and the Early Wars of the Successors」Univ. of Texas Press

アレクサンドロスの東征軍の中核を成したのはマケドニア人の将兵たちであり、特にマケドニア密集歩兵や近衛歩兵といった人々の占める割合は大きいものでした。アレクサンドロス死後の後継者戦争では彼らは様々な武将のもとで戦い、特にエウメネスの指揮下に…

姫岡とし子「ローザ・ルクセンブルク」山川出版社(世界史リブレット人)

第一次大戦末期、ドイツで海軍の水平反乱が発端となり革命が始まり、帝政が倒れました。その後共和国となったドイツにおいて、スパルタクス団改めドイツ共産党が蜂起しますが失敗に終わり、ドイツ革命が終焉を迎えることになります。本書はドイツ革命におい…

12月の読書

今月も気がつけばのこり1ヶ月。コロナだなんだといろいろありましたが果たして来年はどうなるのか。今月は下半期および年間のベスト本を選ぶ予定ですが、前半にやたらいろいろ本を読む時間が取れた一方で後半は時間がなくなり、どうなりますかね。それはさて…

ピーター・フランコパン(須川綾子訳)「シルクロード全史 文明と欲望の十字路(上)(下)」河出書房新社

古代からユーラシア大陸の東西を結ぶオアシスの道、草原の道、海の道といった東西交渉路の歴史については様々な研究が行われています。「シルクロード」に代表される東西交渉路がユーラシア規模で形成され、それを通じて絹に代表される様々なもの、仏教やキ…

澤田典子「よみがえる天才4 アレクサンドロス大王」筑摩書房(ちくまプリマー新書)

アレクサンドロス大王関連書籍というと、欧米諸国では汗牛充棟の様相を呈しているところがあります。しかし日本ではギリシア史研究がアテネ中心であったということもあり、研究者の数も少なく、それほど本が出ていないのが現状です。そのような状況下で、数…

11月の読書

11月になりました。先月は思ったほど読めずに終わってしまいましたが、今月はどうなるか。このような本を読んでいます。アザリーン・ヴァンデアフリートオルーミ「私はゼブラ」白水社:読了フィリップ・マティザック「古代ローマ帝国軍非公式マニュアル」筑…

谷井陽子「八旗制度の研究」京都大学学術出版会

16世紀後半、交易ブームの影響が及ぶなか東北アジアでは女真族がヌルハチの元で統合されていきました。彼の子孫たちの不断の努力を通じて大清帝国(清朝)が成立しましたが、帝国の根幹をなすしくみとして八旗と呼ばれる社会制度・軍事制度の存在が挙げられ…

立石博高「フェリペ2世」山川出版社(世界史リブレット人)

山川出版社の「世界史リブレット人」シリーズも6割くらいが刊行されました。全部出るまでどれくらいかかるかわかりませんが、無事に刊行されて欲しいですし、可能なら第二期とかも出て欲しいものですが、厳しいでしょうか。 「太陽の沈まない帝国」スペイン…

10月の読書

10月になりました。このような本を読んでいます。 谷井陽子「八旗制度の研究」京都大学学術出版会:読了 マーガレット・アトウッド「獄中シェイクスピア劇団」集英社:読了 小笠原弘幸「オスマン帝国英傑列伝」幻冬社(幻冬社新書):読了 立石博高「フェリ…

パニコス・パナイー(栢木晴吾訳)「フィッシュ・アンド・チップスの歴史」創元社

昔、テレビで「名探偵ポワロ」をやっていたとき、エンディング近くでポワロがフィッシュ・アンド・チップスを文句を言いながらも、もぐもぐたべている場面を見た記憶があります。話のはじめのほうで、イギリスにあるのは食べ物であって料理ではないと豪語し…

アーシュラ・K・ル=グウィン(谷垣暁美訳)「ラウィーニア」河出書房新社(河出文庫)

ウェルギリウス「アエネーイス」というと、ローマの文学としてその名がまず挙げられる作品です。トロイアの英雄アエネーアスがトロイアを離れ一族郎党仲間たちを連れて各地をめぐり、イタリアにたどりつくという話を描いていますが、話はアエネーアスが現地…

ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ(木下眞穂訳)「忘却についての一般論」白水社

主人公ルドは姉が鉱山技師と結婚したことに伴い、ポルトガルからアンゴラへ渡ります。そこでアンゴラの高層マンションの最上階にて姉夫婦と一緒に暮らすようになります。一方、当時はアンゴラがポルトガルからの解放闘争が展開しており、ついに1975年に独立…

9月の読書

9月になりましたが、果たして今後どうなるのか。それはさておき、こんな本を読んでいます。 パニコス・パナイー「フィッシュ・アンド・チップスの歴史」創元社:読了カレル・チャペック「白い病」岩波書店(岩波文庫):読了岸田麻矢「異国のおやつ」エクス…

伝カリステネス(橋本隆夫訳)「アレクサンドロス大王物語」筑摩書房(ちくま学芸文庫)

20歳で即位し、その2年後の紀元前334年にペルシア遠征に出発、それからわずか4年程度でペルシア帝国を滅ぼすとともに遠征を続け、遠征開始から10年でかつてのペルシア帝国領を征服したアレクサンドロス大王。一瞬夜空で明るく瞬いた星のような生涯は様々な人…

三浦徹(編)「750年 普遍世界の鼎立」山川出版社(歴史の転換期)

山川出版社の世界史シリーズ「歴史の転換期」も残る巻がだいぶ少なくなってきました。今回は750年を扱います。ちょうど時代としては中国では唐が玄宗皇帝の治世も後半に差し掛かり、爛熟期といった感があるところであるいっぽうで、イスラム世界に目を向ける…

Frank L. Holt 「The Treasures of Alexander the Great」Oxford University Press

アレクサンドロス東征の12年間、広大な領域を征服していく過程で多くの富を獲得していったことが史料にも現れています。そういったことから、アレクサンドロス東征を通じて獲得された財貨が東地中海世界に流入し、貿易をさかんにしたり、経済活動を活発化さ…

8月の読書

8月になりました。世の中は未だ大変な状況が続きます。疫病流行中です。まさに「デカメロン」とか「ペスト」、「いいなづけ」の世界のようですが、8月はこういう本を読んでいます。田中創「ローマ史再考」NHK出版(NHKブックス):読了小池和子「カエサル」…

シオドラ・ゴス(鈴木潤他訳)「メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち」早川書房

時は世紀末のヴィクトリア朝、ロンドンにて主人公メアリ・ジキルは死んだ母親が「ハイド」という人物に毎月送金していたことを知ります。この「ハイド」、殺人容疑で追われている人物ですが、なぜ母が彼に送金していたのか。その謎を解くため、メアリは探偵…

井上浩一「歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品」白水社

昨年末より、ビザンツ帝国関連の書籍が次々と刊行されています。その中には私も読んで感想を書いたアレクシオス1世の伝記「アレクシアス」も含まれます。本書は、その「アレクシアス」を書いた歴史家にしてビザンツ皇女アンナ・コムネナの生涯と、彼女の作品…

7月の読書

今年ももう半分終わってしまいました。果たして後半はどうなるんでしょうか。それはさておき、7月はこんな感じです シオドラ・ゴス(鈴木潤他訳)「ミセス・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち」早川書房:読了大月康弘「帝国と慈善 ビザンツ」創文社…

上半期ベスト約10冊

少し早いかなとは思ったのですが、もうここで上半期のベスト約10冊を発表してしまおうかと思います。 2月と3月が全くブログに感想を書かないまま終わってしまったのですが、その後反動が出たのか ブログの更新が4月と5月に急に増えました(コロナのせい、と…

中谷功治「ビザンツ帝国 千年の興亡と皇帝たち」中央公論新社(中公新書)

ヨーロッパとアジアにまたがる領土を保持しつつ、千年に渡り存続したビザンツ帝国、その歴史を扱った本が2019年から2020年にかけて次々と刊行されています。このブログでもいくつか取り上げて感想を書いてきました。まるで「日本におけるビザンツ年」のよう…

ビュルガー(酒寄進一訳)「ほら吹き男爵の冒険」光文社(古典新訳文庫)

ミュンヒハウゼンというと、今では人の気を引くために怪我や病気を捏造するようになる病気の名前でよく出てきます(ミュンヒハウゼン症候群、代理ミュンヒハウゼン症候群)。少々おどろおどろしい演出のテレビ番組などでこの病気の人が他人を傷つけていたと…

6月の読書

6月になりました。6月は以下のような本を読んでいます。 >6月9日に拍手コメントを下さった方コメントありがとうございます。中世ヨーロッパの軍事史に関する本は色々ありますが、セッティアの本はなかなか面白かったので紹介してみました。 サルマン・ラシ…

檀上寛「陸海の交錯 明朝の興亡」岩波書店(岩波新書)

岩波新書ででているシリーズ「中国の歴史」はなかなか思い切ったシリーズ構成をしています。1巻では有名人は有名な出来事をあまり出すことなく、古代中国の構造を描き出し、2巻目では江南の歴史を、3巻目では草原から見た中国史を描き出してきました。通常の…

高橋進「ムッソリーニ」山川出版社(世界史リブレット人)

第二次世界大戦の枢軸国を見て比べたとき、敗戦までのプロセス及びその後の状況には色々な違いが見られます。イタリアの場合はレジスタンスが発生したり国際軍事裁判も開かれていないなど、ドイツや日本とはかなり違うところがみられますが、それは一体なぜ…

プルタルコス(柳沼重剛訳)「英雄伝1・2・3」京都大学学術出版会(西洋古典叢書)

京都大学学術出版会から出ているプルタルコス「英雄伝」については、エウメネス伝が掲載されている4巻および、アレクサンドロス大王伝が掲載されている5巻は手元に持っていました。しかし、よく考えたところそれ以前の巻は図書館で借りて読んだことはありま…