まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2020-01-01から1年間の記事一覧

5月の読書

5月を迎えました。多くの人がひたすら自宅に篭り続ける生活がいつまで続くのかは正直わかりませんが、はたしてどうなるのやら。 それはさておき、5月はこのような本を読んでいます。 檀上寛「陸海の交錯 明朝の興亡」岩波書店(岩波新書):読了 高橋進「ム…

根津由喜夫「聖デメトリオスは我らとともにあり 中世バルカンにおける「聖性」をめぐる戦い」山川出版社

キリスト教世界の聖人の一人、聖デメトリオスは4世紀に殉教したとされますが、現存する彼の殉教譚は最も古いものでも8世紀のものであり、実在はかなり怪しい聖人です。しかしテサロニケの守護聖人として崇められるようになり、疫病や外敵の襲来に際し聖デメ…

A.A.ゴルスキー(宮野裕訳)「中世ロシアの政治と心性」刀水書房

中世ロシアというと、馴染みがない人が多い分野かもしれません。知っている人がいるとすると、エイゼンシュタインの映画になったアレクサンドル・ネフスキーや中世叙事詩、そしてのちに歌劇の題材となる遠征を率いたイーゴリ公など、ロシアの芸能文化関係で…

三佐川亮宏「紀元千年の皇帝 オットー三世とその時代」刀水書房

神聖ローマ帝国皇帝オットー3世、と言われても、何をやった人なのかわからない人が圧倒的に多いと思います。世界史用語的に言えば、神聖ローマ帝国皇帝オットー1世の孫、ビザンツ皇帝の姪を母とし、2つの皇帝家門の血統を引く皇帝で、オットー朝の皇帝理念(…

Waldemar Heckel 「In the Path of Conquest : Resistance to Alexander the Great」, Oxford Univ.Press

日本ではアレクサンドロス大王に関する書籍の数はそれほど多くありませんが、欧米では毎年のようにアレクサンドロス を扱った一般向け書籍から研究書まで、多くの書籍が刊行されています。玉石混交、汗牛充棟といった感じではありますがそれだけ興味関心を抱…

M・シュクリュ・ハーニオール(新井政美監訳、柿崎正樹訳「文明史から見たトルコ革命」みすず書房

長年に渡り東地中海世界に君臨したオスマン帝国も、19世紀には「瀕死の病人」などと呼ばれる状態になっていきました。そして第1次世界大戦のあと、トルコ革命によって帝国は滅び、新しいトルコ共和国のもとトルコ民族主義をおしだしつつ、イスラムを抑え西洋…

川添愛「聖者のかけら」新潮社

時代は13世紀、ベネディクト修道会系のモンテ=ファビオ修道院に、聖ドミニコのものと称する聖遺物が届けられます。その聖遺物はもう死にかけているような老人が歩けるようになるなど、修道院に次から次に奇跡を引き起こします。しかしドミニコ会の修道士か…

4月の読書

4月になりました。コロナのせいで色々と面倒なことになってきていますが、果たしてどうなりますやら。 それはさておき、4月はこんな本を読んでいます。 エリー・アレグザンダー「ビール職人のレシピと推理」東京創元社:読了 根津由喜夫「聖デメトリオスは我…

ヘンリク・シェンキェヴィチ(森田草平訳)「十字軍の騎士」改造社

いまでは何度も映画化された「クォ・ヴァディス」で有名なシェンキェヴィチですが、彼はポーランドの歴史を題材とした小説も数多く残しています。そしていまでは「クォ・ヴァディス」くらいしか本屋では見かけませんが、日本でも他の作品の翻訳が出されてい…

佐藤猛「百年戦争 中世ヨーロッパ最後の戦い」中央公論新社(中公新書)

百年戦争というと、ジャンヌ・ダルクの存在もあって、その名を知る人も多い中世ヨーロッパ史の出来事かと思います。ただ、名前だけは知っていても、どんな戦争だったのかと言われると、なんだったかなという人も多そうです。高校世界史レベルだと、大陸のイ…

古松崇志「草原の制覇 大モンゴルまで」岩波書店(岩波新書)

岩波新書からシリーズとして中国の歴史が出始めています。第1巻は古代をちゅうしんに唐の途中まで、第2巻は江南の歴史ということで南宋あたりまで扱います。そして第3巻では草原の騎馬遊牧民の世界の歴史を扱い、モンゴルによるユーラシア広域支配、中国では…

馬部隆弘「椿井文書 日本最大級の偽文書」中央公論新社(中公新書)

アレクサンドロス大王研究でも大王が死ぬ数日前の状況を伝える、エウメネスがのこした「王室日誌」が真作か偽作かをめぐって論争があるように、ある史料の真偽をめぐる問題が発生することもあります。歴史研究において史料として用いる文献や文書、絵画や発…

ボレスワフ・プルス(関口時正訳)「人形」未知谷

世界史で必ず出てくるロシア=トルコ戦争(1877~78)の時期、バルカン半島の方に赴き、莫大な財産を築いて帰ってきたひとりの男がいました。その男、ヴォクルスキは零落した家の生まれで、ポーランドがロシアに対し蜂起した際にそれに参加し、シベリア流刑…

3月の読書

3月になりました。2月は結局これは絶対勧めたいと思う本は特になく(面白いとは思っても、そこまで惹かれる本ではなかったというかなんというか)、感想は一本もアップしませんでした。果たして3月はどうなりますか。エイドリアン・ゴールズワーシー「古代ロ…

2月の読書

2月はこんな感じで本を読んでいます。 色々と忙しくあまりまともに読めていないので、感想もちゃんとまとめていません。何だろう、この忙しさと本の読めなさは。洋書に一寸手を出しているというのも原因ではあるのですが、それだけでは説明不能です。 チャー…

小林功「生まれくる文明と対峙すること 7世紀地中海世界の新たな歴史像」ミネルヴァ書房

7世紀、「アラブの大征服」により古代から続いてきたササン朝は滅亡、ビザンツ帝国はその領域を縮小させました。アラブ国家の登場により、オリエント世界は古代から新しい段階に入りました。では、生き残ったビザンツ帝国がこの新たに生まれてきた国家とどの…

アルド・A.・セッティア(白幡俊輔訳)「戦場の中世史」八坂書房

中世ヨーロッパの戦争というと、鎧や槍を装備した騎士のぶつかりあいと言ったイメージがあるかもしれません。しかし、本書によると、中世ヨーロッパにおいて、大軍同士がぶつかり合う会戦というのは大きな損害が出るリスクがあることから極力避けようとして…

1月の読書

年が明けました。今年もよろしくお願いします。 ここ数年で買い込んで読み残している本、年末にまとめて買った古本、その辺りを少しずつ今年の間に片付けたいと思っています。 それは以下の本です 「紀元千年の皇帝」 「漢帝国の成立」 「戦場の中世史」 「…