まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2017-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト

おそらく、今年のベストはこの10冊で確定して良いと思います。まだ今年は1週間ありますが、これ以外を選ぶのは正直なところ厳しいと思いますので。なお、シリーズものはまとめて1冊のカウントにしようと思います。なお、順番は適当です (1)エドワード・…

中島毅「スターリン」山川出版社(世界史リブレット人)

ソ連の指導者スターリンについて、ソ連を超大国にした、ドイツとの戦いを勝利に導いた指導者として高く評価する意見と反対派に対する厳しい弾圧や抑圧を行った独裁者として否定的に評価する意見に分かれるということはしばしば言われます。 本書は、そんなス…

エドワード・ケアリー(古屋美登里訳)「肺都(アイアマンガー三部作3)」東京創元社

今年に読んだ外国文学の中で、特に引き込まれたものとしてエドワード・ケアリーの「堆塵館」「穢れの町」があります。独特なイラストが目を引き、一風変わった世界を舞台にしていながらも読み始めたらあっという間に引き込まれ、次の展開が非常に気になる終…

12月の読書

もうすぐで今年も終わりですね。12月はこのような本を読んでいます。 塩野七生「ギリシア人の物語3」が半ばくらいに出るそうです。今回はアレクサンドロス大王の伝記のようですが、果たしてどんな感じなのか、怖いもの見たさで読んでみようとは思いますが、…

森谷公俊「アレクサンドロス大王 東征路の謎を解く」河出書房新社

アレクサンドロス大王に関する著作を多く出している森谷先生は、2017年にはプルタルコス英雄伝のアレクサンドロス大王伝の翻訳と注釈を発表しています。その時に注の部分で、アレクサンドロスの東征路についての著作が刊行予定である旨が書かれていました。…

大野誠「ワットトスティーヴンソン」山川出版社(世界史リブレット人)

産業革命というと、イギリスで綿工業から始まり、やがて様々な分野の発展や交通手段の発展をもたらし、イギリスを「世界の工場」たらしめるに至った出来事として習ってきた人が多いと思います。 その産業革命の最中に見られた技術革新というと、ワットの蒸気…

11月の読書

11月はこんな本を読んでいます。 歴史関係の本をよく出してくださる刀水書房の近刊予定を見ると、ヒュー・ボーデン「アレクサンドロス大王」という本がいつか出るらしい。いつ出るのかわからないまま数年経つということはよくありますが、早く出ると良いなあ…

ローレン・グロフ(光野多惠子訳)「運命と復讐」新潮社

駆け落ち同然に結婚したロットとマチルド、結婚してしばらくの間、俳優として目が出ないロットをマチルドが生活費をなんとか稼ぎつつ献身的に支え続けます。やがてロットは脚本家として成功し、彼は幸せに満ちた夫婦生活を送っていたのですが、ある時妻の秘…

10月の読書

10月はこんな感じで本を読んでいます。 今年のノーベル文学賞はカズオ・イシグロだったようですが、うちのブログにも「忘れられた巨人」の感想 はあります。この機会についでにリンクを貼ってみました。そして、出版社の情報では今月に文庫化されるとのこと…

アガサ・クリスティー( 安原 和見)「オリエント急行殺人事件」光文社(古典新訳文庫)

推理小説をよく読む人はもちろん、そうでない人でも、アガサ・クリスティーの名前はどこかで聞いたことがあるでしょう。また、NHKの海外ドラマ枠で、長年にわたり放送された「名探偵ポワロ」を見ていた人も多いのではないでしょうか。 緑の眼に卵型の頭、黒…

9月の読書

月はあまり本を読まぬまま終了。9月はこのような本を読んでいます。 C.S.ルイス「ナルニア国物語5 ドーントレッダー号の航海」光文社(古典新訳文庫):読了 アガサ・クリスティ「オリエント急行殺人事件」光文社(古典新訳文庫):読了 パトリック・ロス…

岩崎周一「ハプスブルク帝国」講談社(現代新書)

*注:本当は崎の字は「たつさき」の方ですが、文字化けしてしまうため普通の崎の字にしています。すみません 広大な領土に多くの民族をかかえ、様々な文化が存在する国家は歴史上いくつか存在します。そのような国の一つとして、ヨーロッパ中央部を中心にし…

8月の読書

8月になりましたが、こんな感じで本を読んでいます。 岩崎周一「ハプスブルク帝国」講談社(現代新書):読了マイケル・オンダーチェ「ビリー・ザ・キッド全仕事」白水社:読了

柴裕之「徳川家康 境界の領主から天下人へ」平凡社

戦国三英傑としてまとめられる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、彼らの天下統一について「織田がつき、羽柴がこねし天下餅 座りしままに食うは徳川」という具合に語られることがあります。また、鳴かぬなら鳴くまで待つという後世の評価にも見られるように、家…

タヌーヒー(森本公誠訳)「イスラム帝国夜話(上)」岩波書店

イスラム世界の説話、逸話集というと、『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』が有名です。イスラム帝国に流入した興味深い、奇想天外な説話の数々に見せられた人も多いと思います。しかしそういう説話集とはまた違う味わいのあるのが、アラビアンナイトにも…

7月の読書

7月になりました。今月はこんな本を読んでいます。 夏の暑さも日増しに強くなり、あまり読書ははかどらず。 先月と比べるとペースは落ちそうです。 それは別として、なぜかプルタルコス(森谷公俊訳)「新訳アレクサンドロス大王伝」の感想が検索で引っかか…

プルタルコス(森谷公俊訳)「新訳アレクサンドロス大王伝」河出書房新社

現在、日本におけるアレクサンドロス大王研究の第一人者というと森谷公俊先生の名前を挙げない人はいないでしょう。これまでに、読みやすく詳しいアレクサンドロス大王に関する著作を数多く出してきました。その著作では、史料についてどのように解釈したの…

白石典之「モンゴル帝国誕生」講談社(選書メチエ)

13世紀、ユーラシア大陸を席巻し、「パクス・モンゴリカ」と呼ばれる状況を築いたモンゴル帝国、昨今ではこの時代を「モンゴル時代」と呼ぶこともおおくなりました。そしてモンゴル帝国についても研究が進み、モンゴルの登場を持って「世界史」がはじまると…

6月の読書

6月は以下のような本を読んでいます。5月は思った以上に面白い本にあたり、ついつい紹介記事も多く書いてしまいました。はたして6月はどうなるか。 プルタルコス「新訳アレクサンドロス大王伝」河出書房新社:読了 マーク・マゾワー「バルカン」中央公論…

和田春樹「レーニン」山川出版社(世界史リブレット人)

20世紀という時代に大きな衝撃を与えた、良きにつけ悪しきにつけ世界的な影響を及ぼした出来事というと、やはりロシア革命は外すことはできないとおもいます。本書は、そのロシア革命の指導者であったレーニンについてのコンパクトな伝記です。レーニンの生…

エドワード・ケアリー(古屋美登里訳)「穢れの町(アイアマンガー三部作2)」東京創元社

塵を扱い財をなしたアイアマンガー一族が築いた巨大な館「堆塵館」を舞台に、一族の一人クロッドと、そこにやってきたルーシーが出会い、そこから世界が動き出した第一部「堆塵館」、館の中で混乱が生じ始め、世界のあり方が変わり始めるとともにクロッドと…

大牟田章「アレクサンドロス大王 「世界」をめざした巨大な情念(新訂版)」清水書院

最近では森谷公俊先生が様々な著作を発表し、6月にはプルタルコスの訳と註を出すという具合ですが、それ以前にアレクサンドロス大王について専門的に研究していたのは大牟田章先生くらいのものでした。以前、このブログでも紹介したアッリアノスの翻訳および…

フランソワ・アルトーグ(葛西康徳、松本英実訳)「オデュッセウスの記憶」東海大学出版部

古代ギリシアについて、ギリシア人は自分たちを「ヘレネス」、異民族を「バルバロイ」と呼んで区別していたということは世界史の教科書にも出てきます。では、何をもってギリシアと非ギリシアの区別をつけるのか、そして両者の境界はどこにあるのか。 本書で…

チャールズ・キング(前田弘毅監訳)「黒海の歴史」明石書店

海とそれを取り巻く世界については歴史的に多くの研究が積み重ねられ、今も続いています。しかし、地中海やインド洋と同じく古代から様々な文明・文化の交流や経済活動の舞台となり、沿岸部では様々な帝国が栄え、諸集団の移動が活発であり、近現代には国際…

5月の読書

5月になりました。以下のような本を読んでいます。 ずいぶん前から読んでいるアルトーグ「オデュッセウスの記憶」ですが、なかなか難渋しています。なんだろう、難しいというかなんというか、、、。おそらく来月くらいまでかかりそうです。 このようなこと…

小田中直樹(編集)、帆刈浩之(編集)「世界史/いま、ここから」山川出版社

昨今、世界史の概説的な本、「世界史」を題材とした本がいろいろなところから出版されています。様々な経歴の持ち主により書かれたそれらの本のなかには、非専門の読書好きな人の手で書かれたものもあります。ただ、そういう本を見ていると、面白いこと考え…

浦野聡(編著)「古代地中海の聖域と社会」勉誠出版

かつて、様々な神々が崇拝され、神殿が建設され、儀式や祭祀が行われ、やがてパレスチナで誕生したキリスト教がひろがっていった古代地中海世界、そこには様々な「聖域」が存在していました。本書では、古代ギリシア古典期のアテナイから、ヘレニズム時代、…

4月の読書

4月になりました。4月はこのような本を読んでいます。3月から読んでいて終わらない本、4月になってから読み始めた本、いろいろありますが。 小田中直樹(編集)、帆刈浩之(編集)「世界史/いま、ここから」山川出版社:読了 ウンベルト・エーコ「バウ…

岩明均「ヒストリエ」10巻、講談社

アレクサンドロス大王に仕えた書記官エウメネスを主人公とする漫画「ヒストリエ」の新刊が久しぶりに出ました。1回読んだ後での感想なので、この後加筆したり修正したりする箇所も出るかもしれませんが、感想を書いておこうと思います。以前第9巻がでたの…

平山優「武田氏滅亡」KADOKAWA(角川選書)

数年前、「長篠合戦と武田勝頼」「検証 長篠合戦」において、史料をしっかりよみこみながら、近年の“通説”に対して検討を加えながら、長篠合戦の展開や、当時の軍制、織田と武田の違い、そして武田勝頼の苦闘を描いた著者による、武田氏滅亡までの歴史を扱っ…