まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2010-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト

今年読んだ本のなかから、ベスト10をえらんでみました。べつに順番は良かった順番というわけではなく、単に読んだ順番に並べているだけです。なお、漫画は抜き、ということで。 ・クレア・キーガン「青い野を歩く」白水社(エクス・リブリス) ・澤田典子「…

ダシール・ハメット「ガラスの鍵」光文社(古典新訳文庫)

禁酒法時代のアメリカ、とある市の賭博師ボーモントは、友人であり市を裏で牛耳る顔役マドヴィックから上院議員選挙への協力を頼まれます。その時、ボーモ ンドはその話を断るのですが、その後上院議員の息子の遺体を発見、やがてその犯人がマドヴィックであ…

桜井万里子・師尾晶子(編)「古代地中海世界のダイナミズム」山川出版社

日本で西洋古代史の研究が行われるようになってから、もうかなりの年月になりますが、その間に研究はより精緻なものとなっていますし、対象となるテーマも 広がってきてます。また、研究に携わる教員・学生も普通に海外に留学して研究に励んだり、海外の雑誌…

五十嵐修「王国・教会・帝国 カール大帝期の王権と国家」知泉書館

中世ヨーロッパ史において、カール大帝は西ヨーロッパ世界の成立にも深く関わる、非常に重要な人物の一人です。しかしその割には彼を扱った本は数が少なく、その少ない本も絶版となっているというのが現状でした。 本書は、かつて講談社選書メチエでカール大…

12月の読書

今年も後1ヶ月になりました。さて、どれだけ本を読めるかな。 渡邊義浩「儒教と中国」講談社(選書メチエ):読了 桜井万里子・師尾晶子(編)「古代地中海世界のダイナミズム」山川出版社:読了 ダシール・ハメット「ガラスの鍵」光文社(古典新訳文庫):…

ウンベルト・エーコ(堤康徳訳)「バウドリーノ(上・下)」岩波書店

「薔薇の名前」、「フーコーの振り子」などで有名なウンベルト・エーコの久々の小説は、12世紀から13世紀の中世ヨーロッパを舞台とした、虚構と現実の 狭間が段々とよく分からなくなっていきながら展開される冒険小説のようなものでした。しかし単なる冒険小…

ジュディス・ヘリン「ビザンツ 驚くべき世界帝国』白水社

中世の地中海世界において1000年の長きにわたって存在したビザンツ帝国、しかし現代においてビザンツ帝国に対する扱いはあまり良くないところがありま す。byzantineという英語の単語にはずるがしこいとか複雑、陰険などの意味があるようですし、今年出た塩…

11月の読書

神保町の古本市などで月末に大量に本を購入して、11月に突入したわけですが、はたしてどうなるんでしょうかねえ。 岡美穂子「商人と宣教師」東京大学出版会:読了 小島毅「中国思想と宗教の奔流」講談社:読書中 プラトン「プロタゴラス」岩波書店(岩波文庫…

井野瀬久美惠「黒人王、白人王に謁見す」山川出版社

ヴィクトリア女王が黒人王に聖書を贈る場面を描いた一枚の絵画と、著者が見つけた「父がヴィクトリア女王より聖書を贈られた」と語る黒人王の渡英のニュー ス。そこから、この絵に描かれた黒人王の正体や、この絵の扱いの不思議さ(画家はかなりの大家なのに…

安彦良和「完全版 アレクサンドロス 世界帝国への夢」NHK出版

いまから7年ほど前の2003年、NHKで『文明の道』という番組が放送されていました。アレクサンドロスの東征からモンゴル帝国までのユーラシア大陸に おける文明の対立と交流をテーマにした番組でしたが、その関連書籍としてアレクサンドロスとクビライにつ…

山花京子「古代エジプトの歴史 新王国時代からプトレマイオス朝時代まで」慶應義塾大学出版会

古代エジプトの歴史というと、ピラミッドや大規模な神殿などの建造物、ミイラや死者の書などの死後の世界にまつわる文化、オシリスなどの神々、ツタンカー メンやラムセス2世などのファラオ、そしてクレオパトラについて扱われた本は多数ありますし、発掘に…

10月の読書

10月はこんな感じで読んでいこうと思っています。 なんか漫画がおおいなあ…。 井野瀬久美惠「黒人王、白人王に謁見す」山川出版社:読了 安彦良和「完全版 アレクサンドロス」NHK出版:読了(再読) よしながふみ「きのう何食べた?4」講談社:読了 惣領…

ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」(2巻)、エンターブレイン

昨年の秋に突如登場し、各方面で話題となり、いつの間にか何かの賞まで取ってしまった「テルマエ・ロマエ」の第2巻です。1巻目が出たときに、このような展開になることを予想した人が果たしてどれだけいたでしょうか。 話の展開は1巻同様、ハドリアヌス帝治…

塩野七生「十字軍物語1」新潮社

都市国家ローマができてから西ローマ帝国が滅亡するまでを一人で書き上げた「ローマ人の物語」が完結してから、次はどこを扱うのかが注目されていましたが、次のテーマに選んだのは十字軍でした。 本書で扱われているのはクレルモン公会議から第1回十字軍の…

9月の読書

9月は色々と忙しいため、そんな日本は読めないような気がしますが、読んだ物があったらここを更新していきます。 ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ」(2巻)エンターブレイン:読了 野町啓「学術都市アレクサンドリア」講談社(学術文庫):読了 セシル・モ…

デイヴィッド・ベニオフ(田口俊樹訳)「卵をめぐる祖父の戦争」早川書房

ドイツ軍による包囲まっただ中のレニングラードに暮らしていた著者の祖父レフは、略奪罪に問われ、秘密警察に捕まった事がきっかけで秘密警察の大佐から奇 妙な命令を受けることになりました。それは、結婚式のケーキを焼くために卵1ダースが必要になるから…

ダニイル・ハルムス(増本浩子、ヴァレリー・グレチェコ訳)「ハルムスの世界」ヴィレッジブックス

ロシア・アヴァンギャルドの代表的作家、不条理文学の先駆者といわれるダニイル・ハルムスの短篇集です。ただし、短篇集とは書いたものの、1頁にも満たない文章も非常に多く収録されています。 内容について説明することは極めて困難です。同じ内容の繰り返…

8月の読書

8月はこんな感じで本を読んでいます。色々と忙しいため、そんなに冊数は読めない月になりそうですが、ま、そういうときもあるからいいか。 谷口研語「流浪の戦国貴族 近衛前久」中央公論新社(中公新書):読書中 エドヴァルド・ルトベラゼ「アレクサンドロ…

G.K.チェスタトン「新ナポレオン奇譚」筑摩書房(ちくま文庫)

1984年(オーウェルや村上春樹とおなじ「1984」です)のイギリス、そこは民主政治ではなく、くじ引きによって選ばれる専制君主が好きに政治をやっ ているという国家でした。民衆は皆愚かなんだから、誰がやっても同じだというところが、なかなか毒がある設定…

7月の読書

7月はこんな感じで読んでいます。 小谷仲男「大月氏」東方書店(東方選書):読了 ヴィクトル・ペレーヴィン「宇宙飛行士オモン・ラー」群像社:読了 G.K.チェスタトン「新ナポレオン奇譚」筑摩書房(ちくま文庫):読了 東島誠「自由にしてケシカラン人々の…

吉澤誠一郎「清朝と近代世界 19世紀 シリーズ中国近現代史1」岩波書店(岩波新書)

清朝の近代史というと、アヘン戦争以降の半植民地化への道のりとして、また中国革命への前段階として書かれることが多いようですし、教科書的にはそのよう な扱いになるようで、その結果、清朝はどんどん没落し、衰退の一途をたどっているような書き方になっ…

6月の読書

6月はこんな感じで本を読んでいます。 金文京「三国志演義の世界(増補版)」東方書店(東方選書):読了 吉澤誠一郎「清朝と近代世界 19世紀」岩波書店(岩波新書):読了 岩井淳「ピューリタン革命と複合国家」山川出版社(世界史リブレット):読了 姜尚…

「ヒストリエ」で来る人が多い模様

今月は「ヒストリエ」6巻もでて、そのおかげか、サイトに来る人も増えていますが、ブログに来る人も「ヒストリエ」で来る人が結構います。 記事をアップしたのは最近なのですが、もう検索に引っかかるとは思いませんでした。最近の検索エンジンは凄いなあ。…

岩明均「ヒストリエ」第6巻、講談社

岩明均「ヒストリエ」の最新刊がようやく発売。 第6巻の内容について、 ・マケドニア王国はこんな国。 ・アイデアマン・エウメネスの凄い道具を見よ。 ・“王子とミエザの愉快な仲間達”続々登場。 ・「てきにやられた」 ・“ヘファイステイオン”登場。まさか…

5月の読書

5月はこんな感じで本を読んでいます。 図書館から借りて積んでいる本、結構あるからなんとかしないとな。 岩明均「ヒストリエ」(6巻)講談社:読了 ロベルト・ボラーニョ「野生の探偵たち(下)」白水社(エクス・リブリス):読了 ロベルト・ボラーニョ「…

フランク・オコナー(阿部公彦訳)「フランク・オコナー短編集」岩波書店(岩波文庫)

村上春樹が「フランク・オコナー国際短篇賞」という文学賞を受賞したことで、フランク・オコナーという作家がいることを知った人は多いのではないでしょうか。 始めに状況をはっきりさせず、徐々に情報が小出しにされていくけれど、最後まで分からないことが…

トム・ジョーンズ(岸本佐知子訳)「拳闘士の休息」河出書房新社(河出文庫)

元ボクサーで、コピーライター、用務員等々の経歴を持ち、てんかんや糖尿病などの病気に苦しみながら小説を書き上げたという、極めて変わった経歴を持つトム・ジョーンズの短編集です。 表題作「拳闘士の休息」、弟子にアドバイスをするアル中の元チャンピオ…

澤田典子「アテネ民主政 命をかけた八人の政治家」講談社(選書メチエ)

アテネ民主政というと、成人男子市民による直接民主政ということは、教科書レベルでも習うことです。クレイステネスの改革によって一応できあがったとされる民主政が、その後どのような歩みをたどったのか、本書が扱うのはそのような内容です。 ミルティアデ…

4月の読書

4月はこんな感じで本を読んでいます。 フランク・オコナー「フランク・オコナー短編集」岩波書店(岩波文庫):読了 藤本正行「長篠の戦い 信長の勝因・勝頼の敗因」洋泉社(歴史新書):読了 松方冬子「オランダ風説書」中央公論新社(中公新書):読了 澤…

ジム・ホワイト(東本貢司訳)「マンチェスター・ユナイテッド クロニクル」カンゼン

サッカー界では、今や世界有数のビッグクラブとなったマンチェスター・ユナイテッド。通称「赤い悪魔」の存在感は、イングランドリーグのみならずヨーロッパのサッカー界においても非常に大きな物があります。「ユナイテッド」と名のつくサッカーチームと言…