まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

今年のベスト

今年読んだ本のなかから、ベスト10をえらんでみました。べつに順番は良かった順番というわけではなく、単に読んだ順番に並べているだけです。なお、漫画は抜き、ということで。

・クレア・キーガン「青い野を歩く」白水社(エクス・リブリス)
・澤田典子「アテネ民主政」講談社(選書メチエ)
フランク・オコナーフランク・オコナー短篇集」岩波書店岩波文庫
トム・ジョーンズ「拳闘士の休息」河出書房新社河出文庫

・吉澤誠一郎「清朝と近代世界」岩波書店岩波新書
チェスタトン「新ナポレオン奇譚」筑摩書房ちくま文庫
デイヴィッド・ベニオフ「卵をめぐる祖父の戦争」早川書房(ハヤカワポケットミステリ)

・ジュディス・ヘリン「ビザンツ 驚くべき世界帝国」白水社
ウンベルト・エーコ「バウドリーノ(上・下)」岩波書店
・桜井万里子・師尾晶子(編)「古代地中海世界のダイナミズム」山川出版社

今年読んだ本のなかで、特に面白かったなあという本をあえて選ぶとすると、この10冊ですね。

まず、短篇が3つ。何かが終わるときの寂しさと、何かが始まるときの何とも言えぬ高揚感を感じさせる作品が多く収録されていたキーガン「青い野を歩く」、 “正常な”状態から一寸外れた人達がかなりぎりぎりの状況で生きている様子を書いた短篇が多いジョーンズ「拳闘士の休息」、掲載作「国賓」が強烈な衝撃を 与えるであろうオコナー「フランク・オコナー短篇集」は読んでみて欲しいです。

また、長編だと、レニングラード包囲線という悲惨きわまりない状況を笑いの要素も交えながら描き出したベニオフ「卵を巡る祖父の戦争」、昨日の被害者が明 日の加害者となっていく様子を書いたチェスタトン「新ナポレオン奇譚」、中世ヨーロッパ世界(12~13世紀頃)を満喫できるエーコ「バウドリーノ」 等々、面白い作品と出会うことができました。

そして、このブログでも一番記事をいっぱい書いているような気がする歴史の本からは4冊。人物を通じてアテネの歴史(政治史)を見る、特にペリクレス以降 というあまり扱いの良くない時期を結構扱っている澤田典子「アテネ民主政」、清朝を単なる列強進出のターゲットとしてではなく、19世紀の世界の中で主体 的に振る舞う1国家として描き出した吉澤誠一郎「清朝と近代世界」、ビザンツ帝国1000年の通史とテーマ別記述をうまく組み合わせたヘリン「ビザンツ  驚くべき中世帝国」、そして現時点での日本における西洋古代史研究の深化を知ることができる桜井・師尾(編)「古代地中海世界のダイナミズム」を選んでみ ました。他にも歴史の本は多数あったのですが、あえてこの4冊で。

来年は果たしてどんな本が読めるのか、楽しみにしつつ、年が明けるのを待ちたいと思います(もっとも、年末年始用の書籍は既に確保しているのですが。フラバルとか…)