まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2013-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト

まだ今年もあと数日残っていますが、今年のベスト10冊はこういう感じにしました。 小川剛生「足利義満」中公新書 大内宏一「ビスマルク」山川出版社 クセノポン「アナバシス」岩波文庫 オルダス・ハクスリー「すばらしい新世界」光文社古典新訳文庫 ローラン…

家島彦一「イブン・ジュバイルとイブン・バットゥータ」山川出版社(世界史リブレット人)

イスラム世界ではメッカ巡礼が信者の果たすべき義務とされていました。旅はなかなか大変なものでしたが、旅をした人々のなかに旅行記を残した人々もいました。本書で扱われているイブン・ジュバイルとイブン・バットゥータはその中でも特に有名な人々です。 …

土肥恒之「ピョートル大帝」山川出版社(世界史リブレット人)

ロシアがヨーロッパの大国として認知されるのは18世紀のことですが、その礎を築いたツァーリというとピョートル大帝の名前はまず最初に挙がってくると思います(もう一人挙げるとするとエカテリーナ2世か)。 身長2メートルの巨漢で、腕力のすごさ、造船から…

森谷公俊(著)・鈴木革(写真)「図説アレクサンドロス大王」河出書房新社

アレクサンドロス大王の遠征について「アレクサンドロスの征服と神話」などの本を数多く書いた森谷公俊先生から、アレクサンドロス大王に関する新刊書がでました。今回の本では、ダレイオス3世の死までの時期のアレクサンドロス大王の東方遠征そのものを主題…

チヌア・アチェベ(粟飯原文子訳)「崩れゆく絆」光文社(古典新訳文庫)

主人公オコンクォはアフリカの村落社会で苦労しながら頑張って、妻達、子ども達に対してはまるで昔の家父長制の頃の日本を彷彿とさせるようなふるまいもし ていますが、それなりの地位を築きます。しかしちょっとした事故がきっかけで村から7年間の追放刑に…

12月の読書

12月ですね。もう今年も残すところ1月を切りました。 はたして今月はどんな本が読めるのやら。 そして、今年のベスト10冊は何になるのか。 近藤和彦「イギリス史10講」岩波書店(岩波新書):読了 家島彦一「イブン・ジュバイルとイブン・バットゥータ」山川…

長沼秀世「ウィルソン 国際連盟の提唱者」山川出版社(世界リブレット人)

アメリカ合衆国大統領ウィルソンというと、国際連盟の結成を提唱した人としてしられています。本書ではウィルソンが生きた時代の背景にも触れながら、学 者・大学人としてのウィルソン、政治家としてのウィルソン、そして大統領となってからのウィルソンにつ…

上垣豊「ナポレオン 英雄か独裁者か」山川出版社(世界史リブレット人)

フランス革命の混乱のなかで一人の軍人が人々の期待を集め、フランスの救世主として現れてきます。そして権力の階段を駆け上がり、皇帝として即位し、一時 はヨーロッパの大部分を支配します。しかし、栄光の時は長く続かず、没落し、再起を図るもそれは叶い…

メシャ・セリモヴィッチ(三谷恵子訳)「修道師と死」松籟社

オスマン帝国時代のボスニアを舞台に、修道師(これは本書の独自の訳語)アフメド・ヌルディンは弟が突如捕らえられてしまいます。そしてかれのもとに判事 の妻が自分の弟に相続権放棄するようにできないかと相談をうけたとき、彼はそれによって弟を助けられ…

11月の読書

11月はこんな感じで本を読んでいます。 中野明「グローブトロッター」朝日新聞出版:読了 江村洋「カール5世」河出書房新社(河出文庫):読了 鹿島茂「怪帝ナポレオン3世」講談社(学術文庫):読了(再読) メシャ・セリモヴィッチ「修道師と死」松籟社:…

平岡隆二「南蛮系宇宙論の原典的研究」花書房

イエズス会の布教活動というと、西欧の学問や技術ももたらしつつキリスト教の信者の獲得をはかる様子が中国や日本においてみられます。そして、イエズス会の活動を通じて、日本に16世紀西欧の宇宙論もつたえられました。 本書では、イエズス会の宣教師がキリ…

10月の読書

10月はこんな感じで本を読んでいます。ロナルド・サイム「ローマ革命」は面白いですね。下巻が出たら、それを読んだ上でまとめて感想は書きます。 長田俊樹「インダス文明の謎」京都大学学術出版会(学術選書):読了 ナボコフ「絶望」光文社(古典新訳文庫…

渡邉大門「黒田官兵衛 作られた軍師像」講談社(講談社現代新書)

角川選書から「黒田官兵衛・長政の野望」をだされた渡邊大門先生が、講談社現代新書からは黒田官兵衛の伝記をだしました。角川の方は関ヶ原の合戦前後のこ とがらに集中しているのですが、今回は官兵衛の出自、信長存命中のころのことや秀吉のもとでの活躍に…

加藤九祚「シルクロードの古代都市 アムダリヤ遺跡の旅」岩波書店(岩波新書)

加藤九祚先生は長年中央アジアで遺跡の発掘調査に従事し、旧ソ連圏における中央アジア研究の成果を「アイハヌム」という一人雑誌を刊行して掲載したり、現 地の研究者の著作を翻訳して日本に紹介してきた方です。かなり昔に岩波新書から「中央アジア歴史群像…

加藤博「ムハンマド・アリー 近代エジプトを築いた開明的君主」山川出版社(世界史リブレット人)

ムハンマド・アリーによる近代国家建設の試みと行き詰まり、帝国への野望と挫折をコンパクトにまとめた一冊です。「人を通して時代を読む」というシリーズ 全般のコンセプトとなる帯文から考えると、ムハンマド・アリーの生涯を通じて地中海世界、そして近代…

小林義廣「王安石 北宋の孤高の改革者」山川出版社(世界史リブレット人)

王安石というと、世界史の教科書でも新法の実施者としてその名は必ず登場する人物です。本書は前半で王安石の生涯についてまとめ、後半で彼が実施した新法 の概要、その目標(官界の綱紀粛正・気風刷新、富国強兵)、新法に対する反対意見と王安石の関係、国…

9月の読書

9月はこのような感じで本を読んでいます。 (9/25の拍手へのコメント) コメントありがとうございます。最近出た新書も楽しく読ませて頂きました。そちらの感想も現在執筆中なのですが(本当はもっと先に感想をアップしているはずだったのですが…)、はたし…

渡邉大門「黒田官兵衛・長政の野望 もう一つの関ヶ原」角川書店(角川選書)

2014年の大河ドラマの主人公は黒田官兵衛(如水)にきまりました。すこしずつ配役も発表されており、秀吉役は竹中直人が再び演じることになりました。個人的には前の「秀吉」では書かれなかった晩年の姿がどのように描かれるのか、そこが楽しみですがどうな…

岩明均「ヒストリエ」第8巻、講談社

アレクサンドロス大王の書記官をつとめたエウメネスを主人公とした岩明均「ヒストリエ」、これまでに文化庁メディア芸術祭の漫画部門で大賞を受賞しただけ でなく、手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞している作品です。しかし、マンガ大賞をとったときには新…

8月の読書

8月はこんな本を読んでいます。今月は「ヒストリエ」の8巻がでますね。ずいぶんと間が空きました。連載の方も休載が多くなっているので、色々と心配ではありますが単行本が出るのはありがたいです。 渡邊大門「黒田官兵衛・長政の野望」角川書店:読了 セル…

ローラン・ビネ(高橋啓訳)「HHhH プラハ、1942年」東京創元社

タイトルを見るとこれは一体なんて読んだらいいのかわからない本ですが、以下の文の略です。 Himmlers Hirn heißt Heydrich(ヒムラーの頭脳はハイドリッヒと呼ばれる) ナチスの高官でユダヤ人問題の最終的解決(これが結局ユダヤ人絶滅計画へと向かうわけ…

クセノポン(松平千秋訳)「アナバシス 敵中横断6000キロ」岩波書店(岩波文庫)

紀元前5世紀末、ペルシアの王子で小アジア方面の総督だったキュロス(王朝創始者と区別して小キュロスと呼ぶこともあります)が密かに兵を集め、王位を 狙って内陸へと侵攻します。しかしクナクサの戦いでキュロス軍は途中まで優勢に戦いを進めていたにもか…

7月の読書

7月はこんな本を読んでいます。 ナイジェル・クリフ「ヴァスコ・ダ・ガマの「聖戦」」白水社:読了 石鍋真澄「フィレンツェの世紀」平凡社:読了 本村凌二「世界史の叡知」中央公論新社(中公新書):読了 ブライアン・フェイガン「歴史を変えた気候大変動」…

森部豊「安禄山 安史の乱を起こした「ソグド人」」山川出版社(世界史リブレット人)

安禄山というと、でっぷりと太った体格ながら踊りがうまく玄宗皇帝に気に入られて取り立てられたと言う話、その腹に何が入っているのかと皇帝に聞かれ「た だ赤心のみ」と答えたにもかかわらず、後に安禄山の乱を起こしたと言った逸話があります。世界史の教…

渡辺和行「ド・ゴール 偉大さへの意志」山川出版社(世界史リブレット人)

ド・ゴールというと、フランスの政治家として良く出てくる人物であり、現在でもフランスの空港にその名がつけられていたりする人物です。世界史的には第2 次大戦中の「自由フランス」の話や、第2次大戦後の冷戦構造の中で独自路線を歩み、「多極化」の流れに…

オルダス・ハクスリー(黒原敏行訳)「すばらしい新世界」光文社(古典新訳文庫)

遙か遠い未来、人間を各階級ごとに違う形で生まれるように人工的に細工し、さらに生まれた後は色々な条件付け教育が行われる(本や花に対して拒絶反応を示 すようにする等)、そして生殖につながらないフリーセックスの奨励、快楽薬であるソーマの配給によっ…

6月の読書

6月はこんな感じで本を読んでいます。 ヤマザキマリ「テルマエ・ロマエ6」エンターブレイン:読了 松本佐保「バチカン近現代史」中央公論新社(中公新書):読了 森田安一「木版画を読む」山川出版社:読了 ディヴィッド・シンメルペンニンク=ファン=デル…

高木智見「孔子 我、戦えば則ち克つ」山川出版社(世界史リブレット人)

孔子の仁とは一体何か等々、孔子の思想については色々な考え方があるように思います。そして孔子の思想に関する研究も非常に多くなされていますし、最近も 出土史料をもとにした研究が進められているようです。100頁弱という本書ではどのように孔子を扱って…

大内宏一「ビスマルク ドイツ帝国の建国者」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史リブレット第1回配本の4冊目です。今回配本された5冊の中で唯一近代をあつかった巻でもあります。 構成としては、ビスマルクがどのような状況のもとでプロイセンの指導者となることができたのか、どのような状況がドイツ帝国建国を可能としたのか、彼…

佐藤彰一「カール大帝 ヨーロッパの父」山川出版社(世界史リブレット人)

カール大帝というと、フランク王国の国王で、ローマ教皇からローマ帝国の皇帝位を授かったことと西ヨーロッパ世界の成立、カロリング・ルネサンス、死後の 王国の分裂、こういったあたりは世界史の教科書レベルでも出てきます。もうちょっと踏み込むと、ヨー…