まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2016-01-01から1年間の記事一覧

今年のベスト

もう今年も終わりに近づいているため、読んだ本の中でベスト本を選ぼうと思います。今年は11冊になりました(ベスト10にするのはあきらめました)。 和書(10冊) ・フィクション オルハン・パムク(鈴木麻矢訳)「黒い本」藤原書店 ジム・シェパード…

屋敷二郎「フリードリヒ大王」山川出版社(世界史リブレット人)

「君主は第一の僕」、この言葉は啓蒙専制君主について学ぶ際に必ず出てくる言葉です。発したのはプロイセン王国国王フリードリヒ大王、オーストリア、フランス、ロシアを敵に回した七年戦争で危機にさらされながらも最終的に勝利を掴み、プロイセンをヨーロ…

藤澤房俊「ガリバルディ イタリア建国の英雄」中央公論新社(中公新書)

ガリバルディというと、ある年代以上の人はガンダムのモビルスーツの名前で覚えている人がいるやもしれません。しかし、彼について日本で一般的に知られているであろうこととしては、イタリア統一(リソルジメント)の際に、シチリア島に「千人隊(赤シャツ…

ジム・シェパード(小竹由美子訳)「わかっていただけますかねえ」白水社

本を手に取るときのきっかけは人によって色々あると思います。表紙のデザインだったり、タイトルだったり、有名な人が書いているから等があるとおもいますが、今回取り上げた本は、「わかっていただけますかねえ」という、こちらをなんとなく挑発しているよ…

安村直己「コルテスとピサロ」山川出版社(世界史リブレット人)

「コンキスタドール(征服者)」という言葉があります。コロンブスの航海以降、新大陸各地の征服を進めたスペイン人たちのことをそのように呼ぶのですが、その評価については、先住民の虐殺や社会の破壊などの点で、今ではかなり否定的な評価が強いのではな…

12月の読書

12月になりました。あっというまの1年だったような気がします。 いろいろと忙しくなり、本を読むペースは格段に落ち、来年はもっと落ちそうな気がします。読むものを厳選していか無いとダメだなあ。 それはさておき、今月はこういう本を読んでいます。あと…

氣賀澤保規 「則天武后」講談社(学術文庫)

中国の歴史上、権力を握り、それを思うがままに行使した女性は幾人かみられます。漢の高祖劉邦の妻だった呂后は宮廷で血なまぐさいエピソードは幾つかあるものの国は安定した状態をたもち、清末の西太后は清末の激動の時代におもうがままに力を振るいつつ、…

中西恭子「ユリアヌスの信仰世界」慶応義塾大学出版会

ユリアヌスというと、辻邦生の小説が有名ですし、世界史リブレット人シリーズからも南川高志「ユリアヌス」のようなコンパクトな評伝があります。キリスト教化がすすむ古代ローマ世界で、古代の信仰を復活させようとした人物としてしられていますが本書では…

11月の読書

11月です、もうすぐ今年も終わりです。 今月はこんな感じで本を読んでいます。 伊藤貞夫・秀村欣二「ギリシアとヘレニズム」講談社:読了 氣賀澤保規「則天武后」講談社(学術文庫):読了 中西恭子「ユリアヌスの信仰世界」慶応義塾大学出版会:読了

ユヴァル・ノア・ハラリ(柴田裕之訳)「サピエンス全史(上・下)」河出書房新社

人類進化の歴史を辿るとネアンデルタール人など様々な人類が現れてきた中で、なぜホモ・サピエンスのみが残り、発展し、栄えるように なっていったのか。さらに、人類はどのようにして大規模な集団を維持し、発展することが可能となったのか。そして、科学技…

10月の読書

10月になりました。今月はこんな感じで本を読んでいます。 ディーノ・ブッツァーティ「古森の秘密」東宣出版:読了 ウンベルト・エーコ「ヌメロ・ゼロ」河出書房新社:読了 河西晃祐「大東亜共栄圏」講談社(選書メチエ):読了 ユヴァル・ノア・ハラリ「…

佐藤信弥「周 理想化された古代王朝」中央公論新社(中公新書)

中国の王朝というと、殷周秦漢…といった順番はどこかで覚えさせられた人は多いのではないでしょうか。しかし、高校の世界史では周の時代の後半は春秋時 代・戦国時代とよんで、周の諸侯だった斉や晋の「春秋五覇」、韓魏趙燕斉楚秦の「戦国七雄」といった国…

設樂國廣「ケマル・アタテュルク」山川出版社(世界史リブレット人)

2016年夏、クーデタ未遂事件で注目を浴びたトルコですが、第1次世界大戦後、アジアにおいて国民国家建設、民族独立を目指す運動が活発化した時期に新 しい体制の国家を作り上げています。西欧を手本とした近代化、イスラム圏に属し、国民の多くはやはりイス…

奈良修一「鄭成功」山川出版社(世界史リブレット人)

鄭成功というと、歌舞伎の演目「国姓爺合戦」では彼をモデルにした和藤内が主人公となっていることで知っている人も多いのではないでしょうか。中国人の父 と日本人の母を持ち、東アジアの海の世界で活躍した彼は、流動的な近世アジア海域世界を象徴する人物…

9月の読書

9月はこういう本を読んでいます。 C.S.ルイス「魔術師のおい ナルニア国物語1」光文社(古典新訳文庫):読了 佐藤信弥「周」中央公論新社(中公新書):読了 西川武臣「ペリー来航」中央公論新社(中公新書):読了 カルミネ・アバーテ「帰郷の祭り」未知…

ディアナ・ゲルゴヴァ(千本真生(監修・翻訳)、田尾誠敏、松前もゆる訳)「ゲタイ族と黄金遺宝」愛育社

古代ギリシア人たちがポリスを作った世界、フィリッポス2世やアレクサンドロス大王を輩出したマケドニア王国、この辺りについては長い間の研究蓄積や、近 年の研究の進展により、様々なことがわかるようになっています。しかし、それに隣り合う世界において…

Kostas Vlassopoulos「Greeks and Barbarians」Cambridge Univ. Press

古代ギリシア人は自らを「ヘレネス」、異民族を「バルバロイ」と区分していたとよくいわれます。そして、ギリシア人は「バルバロイ」を自分達より劣る者と いうニュアンスをこめるようになっていったということもよく言われていますし、それとセットで古代ギ…

8月の読書

8月はこのような本を読んでいます。 アルトー「ヘリオガバルス あるいは戴冠せるアナーキスト」河出書房新社(河出文庫):読了 後藤末雄(著)・新居洋子(校注)「乾隆帝伝」国書刊行会:読了 ジョーゼフ・キャンベル「千の顔を持つ英雄(下)」早川書房…

荷見守義「永楽帝」山川出版社(世界史リブレット人)

永楽帝というと甥の建文帝から帝位を簒奪する「靖難の役」、モンゴルへの5回の親征、鄭和の南海大遠征、北京遷都といった大きな出来事がたびたび取り上げ られます。また、過去に永楽帝についての優れた伝記も幾つか出ています。そのなかで、本書は档案(公…

山田勝久・児島建次郎・森谷公俊「ユーラシア文明とシルクロード」雄山閣

インド・ヨーロッパ語族の移動から始まり、アケメネス朝、パルティア、ササン朝といったイランに栄えた帝国の歴史やこの地域で栄えた宗教、そしてシルク ロードの果たした役割といったことを扱った本です。このなかで特に興味を持って読んだのが、ダレイオス…

マーカス・レディカー(上野直子訳)「奴隷船の歴史」みすず書房

かつて、「大西洋三角貿易」においてアフリカから多くの黒人たちが奴隷として連れ出され、アメリカ大陸やカリブ海で用いられてきました。新大陸へのヨー ロッパの進出から間もない時期に始まった奴隷貿易は、18世紀にイギリスも奴隷貿易の権利(アシエント)…

7月の読書

7月になりましたが、こういう本を読んでいます。 上半期ベスト10を選ぶとかそういうのはちょっと難しいので、年末に今年のベスト10を選ぶことで対応しようかと思います。 荷見守義「永楽帝」山川出版社(世界史リブレット人):読了 上田耕造「図説ジャンヌ…

ケン・リュウ( 古沢嘉通訳)「 蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ二: 囚われの王狼」早川書房

ケン・リュウが項羽と劉邦の話を土台として作り上げたSFシリーズの2巻目がでました。前回はシリーズ1冊目の半分ということで、この先にどうなるのかは まだわからない状態で話が終わり、時間を待てという展開で終わりましたが、この間ではどのような展開に…

アリステア・マクラウド(中野恵津子訳)「彼方なる歌に耳を澄ませよ」新潮社

「灰色の輝ける贈り物」のアリステア・マクラウドは非常に寡作な作家ですが、その中で唯一の長編が本書です。ケープ・ブレトン島に暮らす人々、そこを離れ た人々を題材にした短編が多い彼の長編作は、やはりケープ・ブレトン島を中心とし、そこに生きる人々…

アリステア・マクラウド(中野恵津子訳)「灰色の輝ける贈り物」新潮社

カナダのニューファンドランド島とプリンスエドワード島(赤毛のアン関係で有名なところ)のちかくにあるケープ・ブレトン島、そこはスコットランドから やってきた人々の子孫が多くすみ、漁師や坑夫として己の肉体を駆使して働いてきた人々が多くいました。…

松本弘「ムハンマド・アブドゥフ」山川出版社(世界史リブレット人)

ムハンマド・アブドゥフ、と言われても何をした人なのかわからないという人が多いと思います。高校の世界史などで彼についての扱いはどのようなものかとい うと、パン・イスラム主義者アフガーニーの影響を受け、教育と宗教の分野で近代的な要素をとりいれた…

6月の読書

6月になりました。5月はあまり読めませんでしたが、どうなりますかね。 ケン・リュウ「蒲公英王朝記 巻ノ二: 囚われの王狼」早川書房:読了 アリステア・マクラウド「彼方なる歌に耳を澄ませよ」新潮社:読了 アリステア・マクラウド「灰色の輝ける贈り物…

イアン・ドースチャー(河合祥一郎訳)「もし、シェイクスピアがスター・ウォーズを書いたら(全3冊)」講談社

*タイトルが長すぎるので、全体的なタイトルのみを掲載しました。個別のタイトルは「まこと新たなる希望なり」「帝国、逆襲す」「ジェダイ、帰還せり」です。 昨年、エピソード7が公開された「スター・ウォーズ」シリーズ。もともとは旧三部作とまとめてよ…

オルハン・パムク(鈴木麻矢訳)「黒い本」藤原書店

イスタンブルの弁護士ガーリップはある日、妻のリュヤーが置手紙を置いて家を出て行ったことに気がつきます。そして、彼は妻を探し始めるのですが、同じ頃 に姿を消した従兄弟であり妻の兄にあたる新聞社の名物コラムニストであるジェラールと一緒にいるので…

5月の読書

5月はこのような本を読んでいます。4月から読み始めたオルハン・パムク「黒い本」をようやくきちんと読み終えました。ふう、濃密なというかかなりエネルギーを使う読書でした。 カルミネ・アバーテ「偉大なる時のモザイク」未知谷:読了 光成準治「毛利輝…