まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2016-01-01から1年間の記事一覧

池田美佐子「ナセル」山川出版社(世界史リブレット人)

アラブ民族主義の旗手といってもいい人物ナセル、彼については現代のエジプトでの評価はどうなのかというところから本書はスタートします。その名を冠した 公共施設や道路がまったくないわけではないものの、どうも地味な扱われ方をしていたりする、民衆の間…

林田伸一「ルイ14世とリシュリュー」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史リブレット人の新刊の一冊は、フランス絶対王政の歴史で必ずでてくるルイ14世とリシュリューです。タイトルを見て、なぜこの2人で一緒なのか、一緒にするにしても順番が妙ではないかという印象を抱きましたが、内容はリシュリューが先で、ルイ14世が…

ケン・リュウ( 古沢嘉通訳)「 蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ一: 諸王の誉れ」早川書房

七つの王国が並び立つダナ諸島、その北西にあったザナ王国が陸海軍だけでなく飛行船をそなえた強大な軍事力を背景に他の六国を征服して統一帝国が樹立さ れ、ザナ王レオン改めザナ帝国始皇帝マピデレによる中央集権的な統一支配が行われるようになりました。…

中谷功治「テマ反乱とビザンツ帝国」大阪大学出版会

7世紀から9世紀のビザンツ帝国の歴史について「暗黒時代」と言われることがあります。史料の残存状況が極めて悪く、イスラムとの戦いから皇帝専制の中央 集権的な帝国がはっきりと現れるまでの時期について、限られた史料をもとに帝国の姿を描き出さなくて…

4月の読書

4月に突入しました。今月はこのような本を読んでいます。 林田伸一「ルイ14世とリシュリュー」山川出版社(世界史リブレット人):読了 ケン・リュウ「蒲公英王朝記 巻ノ一」早川書房:読了 中谷功治「テマ反乱とビザンツ帝国」大阪大学出版会:読了 オルハ…

ジュリー・オオツカ(岩本正恵・小竹由美子訳)「屋根裏の仏さま」新潮社

かつて、日本からアメリカに渡り、アメリカに住む日本人のもとに嫁いだ女性たちがいました。夫となる人の写真、そして自分はうまくやっているという情報の みを頼りにアメリカに嫁いでいった彼女たちは、事実上だまされるような形でアメリカへ連れてこられ、…

ワレリイ・ブリューソフ(草鹿外吉訳)「南十字星共和国」白水社

ソヴィエト政権が樹立する前、帝政末期のロシアにおいて流行したロシア象徴主義という文化の潮流があります。象徴主義といっても、どういうものなのか、よ くわからないという人もいるでしょうし、わたしも少し調べた程度なのでちゃんと理解しているかという…

良知力「青きドナウの乱痴気 ウィーン1848年」平凡社(平凡社ライブラリー)

1848年はフランス二月革命をきっかけに、ドイツ三月革命、イタリア統一を目指した活動、ポーランドやハンガリーの動きなど、ヨーロッパ激動の年でした。「諸国民の春」という単語を目にしたことがある人もいるかと思います。 この時の革命について、教科書的…

ウンベルト・エーコ(橋本勝雄訳)「プラハの墓地」東京創元社

「シオン賢者の議定書(プロトコール)」という書物があります。ユダヤ人が世界征服を目論むという内容をあつかい、ナチスの蛮行の拠り所となったとも言わ れる本です。現在はこの本は偽書ということで一般的な評価はできあがっていますが、なおもこれをもと…

3月の読書

3月はこういう本を読みました。ウンベルト・エーコ「プラハの墓地」が出た直後にエーコ死去のニュースを聞いた時には驚きましたが。 また、書店にて「西洋古典学研究」の最新刊を読んでいると、Hugh BowdenのAlexander the Great:a very short introduction…

冨田健之「武帝」山川出版社(世界史リブレット人)

前漢の武帝というと、衛青や霍去病による対匈奴戦争、張騫の大月氏への派遣をきっかけにした西域への勢力拡大、各地への度重なる遠征により財政が悪化する なかで実施された均輸・平準など財政政策、郷挙里選に見られる人材登用、そして儒学を官学化したこと…

木畑洋一「チャーチル」山川出版社(世界史リブレット人)

2月の世界史リブレット人のうち、1冊はイギリスの首相などを歴任したチャーチルについて扱った一冊です。チャーチルというと、第二次世界大戦の時に強力 なリーダーシップを発揮して勝利に導いたというようなイメージがある人も多いかと思います。では、本…

ゾフィア・ナウコフスカ(加藤有子訳)「メダリオン」松籟社

第2次世界大戦は1939年にドイツがポーランドに侵攻した時から始まりました。そしてポーランドは瞬く間にドイツに制圧され、国土はドイツと(不可侵条 約に付随した秘密議定書に従い)ソ連により分割占領されてしまいました。そしてドイツ軍占領下のポーラン…

2月の読書

2月に入りました。このような本を読んでいます。 今月は、講談社学術文庫から「アレクサンドロスの征服と神話」がでています。当然読みましたが、感想は過去に既に書いていますので、そちらを見ていただけ ると幸いです。あえて付け加えるなら、あとがきの…

橋場弦「民主主義の源流 古代アテネの実験」講談社(講談社学術文庫)

古代ギリシアのアテネというと、直接民主政を実現したポリスとして知られています。そのアテネ民主政についてはポリスの市民による民主政を最大限に実現し たものとして高く評価される一方で、「衆愚政」として批判的に語られることもあります。特にプラトン…

M.I.フィンリー(柴田平三郎訳)「民主主義 古代と現代」講談社(学術文庫)

アテナイの民主政というと、抽選制度により全ての市民が公職に就く可能性がある、市民が参加する民会で国政の重要方針がそこで決められる、裁判についても 抽選で選ばれた陪審員が評決を下す法廷が開かれている、といったことをどこかで耳にした人たちも多い…

1月の読書

2016年1月、新しい年の最初の月は、次のような本を読んでいます。新春早々、いきなり読み終わった本もありますが、それは年末から読んでいたからです(フィンリーの本)。 そして、2冊の本の感想の終わりで、塩野七生「ギリシア人の物語」にもちょこっとふ…