まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

アリステア・マクラウド(中野恵津子訳)「灰色の輝ける贈り物」新潮社

カナダのニューファンドランド島プリンスエドワード島赤毛のアン関係で有名なところ)のちかくにあるケープ・ブレトン島、そこはスコットランドから やってきた人々の子孫が多くすみ、漁師や坑夫として己の肉体を駆使して働いてきた人々が多くいました。そんな人々の子や孫の世代になると、島を離れて都会 へ移り住み、そこで社会的に成功を収めるものも現れます。

親たちは子供は自分たちとは違うとわかってはいながらも、やはりどこかで子供は自分と同じ道を歩むものだと思っているところがあったり、また子供たちも親 とは違う生き方を選択しながらも、大人の難しさや自分の祖父母、父母の人生の意味を全く理解していなかったことを気づかされたりする様子もみられます。そ して親と違う生き方をしている子供たちがなお抱く郷愁の念が感じられる話も掲載されています。

8編の短編のなかでは、一番最初の「船」にかなり印象的な言葉がありました。主人公の父親は本を読むことを好む場面がたびたび登場します。一方で母親はそ のような物は漁師として生きるには不要と考え、そのような言動をたびたび見せていきます。どうも父親は本当は漁師としての生き方を望んでいたわけではない 様子がうかがえます。「自分本位の夢や好きなことを一生追いつづける人生より、ほんとうはしたくないことをして過ごす人生のほうが、はるかに勇敢だと思っ た」という主人公の言葉に現れた価値観は現代社会では批判・否定する人も結構いますが、人生ではどこかで踏みとどまらねばならない時があるのではないかと 思うので、非常にしっくりときました。

そして、最後の「夏の終わり」は坑夫として各地で働く主人公の状況と、最後に掲載された昔の歌の歌詞が重なり合い、なんとも言えぬ気持ちになってきます。 感想を書くということにしているのですがなかなかこの本については整った文章としてまとめるのはなかなか難しいです。もう少しきちんとした感想を書こうと 思い、何度も読み直すのですが、うまく言語化できぬ感情の昂まりを感じ、なかなかうまく書けないのが困ったところです。何か気の利いた文章を感想として書 き残そうとは思うのですが、難しいですね。