まずはこの辺は読んでみよう

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フランク・オコナー(阿部公彦訳)「フランク・オコナー短編集」岩波書店(岩波文庫)

村上春樹が「フランク・オコナー国際短篇賞」という文学賞を受賞したことで、フランク・オコナーという作家がいることを知った人は多いのではないでしょうか。

始めに状況をはっきりさせず、徐々に情報が小出しにされていくけれど、最後まで分からないことが残される話も結構掲載されています。始めに設定を説明する と、それだけでページを繰ってしまい、そこで挫折するという本がかなりあるのですが、そのような心配は全くありません。結局真相は藪の中のまま、話が進ん でいき、終わっているという物もありますが、一度読み始めると、ぐいぐいと引き込まれていきます。

また、イギリスとの関係やカトリックなど、アイルランドについて知っているとより理解が深まるのではないかと思われる話も掲載されています。とくに「国 賓」については、なぜあのような展開をみせたのかということは、過去の歴史を知らないと理解は難しいでしょう(そして、この話に「国賓」というタイトルが 付けられていることに、かなり衝撃を受ける人もいるのではないでしょうか)。いっぽう、「花輪」については、なぜ花輪が問題になったのか、ちょっとよく分 からないところがありました(話としては、今までよく分かっていなかった相手のことを色々と考え理解が少し深まったと言う展開で、それはそれでよいのです が)。

また、何気ない日常を舞台にし、そこで起きたちょっとした出来事を取り上げた話も面白く、「ぼくのエディプス・コンプレックス」はそういう事ってあるんだ なあと思いつつ読んでいました。自分が同じような状況に置かれたときを想定し、その時如何に振る舞うかを考えた方が良さそうです。