まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

中島毅「スターリン」山川出版社(世界史リブレット人)

ソ連の指導者スターリンについて、ソ連を超大国にした、ドイツとの戦いを勝利に導いた指導者として高く評価する意見と反対派に対する厳しい弾圧や抑圧を行った独裁者として否定的に評価する意見に分かれるということはしばしば言われます。

本書は、そんなスターリンの生い立ちから死去までをあつかい、ソ連という国家の拡大と発展と彼の生涯がどのように関わりがあるのかをまとめていきます。皇帝、否定どちらの評価があるにせよ、彼が指導者として君臨した時代にソ連は工業化を進め、第二次世界大戦で勝利し、核開発も成功するなど、アメリカと張り合う超大国となっていったわけで、ソ連の発展を語るにあたり彼の存在は無視できないことは至極当然でしょう。

内容で興味を引いたところとしては、活動家スターリンが注目されるきっかけは民族問題に関する論文を著したことで、彼は民族問題の専門家のような感じで見られていたというところでしょうか(これについては、グルジアジョージア)人という出自が大きいとも言えます)。民族自決を認めつつ、諸民族の労働者を一つの集団にまとめ、一つの社会主義政党に結集するという彼の考え方は、その後のソ連邦の形成にも重なるところがあるように思えます。

あとは、一国社会主義論は現状肯定、ソ連の利益を中心に据えた国家建設の表明であることや「大テロル」が指導者層の若返りをもたらしたこと、共産党指導者を国家指導者と同一視するような共産党の「国家化」の始まりと穀物調達の関係、独ソ戦を通じてソヴィエト愛国主義とロシアのナショナリズムが結びついていったこと
などが興味深いと思いながら読んでいきましたが。スターリンの生涯とソ連の発展の関係について、コンパクトにまとめており、そのあたりをおさえたい人がさっと読むにはちょうど良い本だろうと思います。