まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

今年のベスト約10冊

もう仕事納めにしたので、今年のベストも決めようと思います。今年は前半はコロナ関係で本をやたらと注文して買って読み、それがことごとく面白かったのでベスト選びに困り、後半は一転して読書ペースがおちたりしました。

ベストを約10冊という適当な括りでしぼり、四捨五入すると10冊になればいいやとおもって決めたところ、こういう結果になりました。全部で14冊に絞りましたが、本当はここに残そうかなとおもうものもありました(檀上先生の明史の岩波新書とか)。でも、まあ約10冊なのでこれういう感じで


窪添慶文「北魏史」東方書店(東方選書)
澤田典子「よみがえる天才4 アレクサンドロス大王筑摩書房ちくまプリマー新書
谷井陽子「八旗制度の研究」京都大学学術出版会
パニコス・パナイー(栢木清吾訳)「フィッシュ・アンド・チップスの歴史」創元社
アーシュラ・K・ル=グウィン(谷垣暁美訳)「ラウィーニア」河出書房新社河出文庫
ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ(木下眞穂訳)「忘却についての一般論」白水社
井上浩一「歴史学の慰め アンナ・コムネナの生涯と作品」白水社
A.A.ゴルスキー「中世ロシアの政治と心性」刀水書房
三佐川亮宏「紀元千年の皇帝」刀水書房
Waldemar Heckel In The Path of Conquest, Oxford University Press
シェンキェヴィチ「十字軍の騎士」改造社
馬部隆弘「椿井文書」中公新書
小林功「生まれくる文明と対峙すること」ミネルヴァ書房
アルド・セッティア「戦場の中世史」八坂書房

今年出た本が多いですが、今年ではないものも含まれています。シェンキェヴィチの「十字軍の騎士」は完訳が出されて良い本だと思いますし、谷井先生の八旗制度にかんする刺激的な一冊は読まれるべき一冊(評価は別として)だと思います。

また、昨年末から今年、ビザンツ史の本が多く出ましたが小林先生のオリジナリティ溢れる初期イスラムビザンツの衝突期を扱った本と、ビザンツ帝国史の伝道者といっても良い井上先生のアンナ・コムネナの本はお勧めしておきたいと思います。

そのほか歴史関係が多くなっています。西洋史関係ではイタリアの事例を多く盛り込んだ中世ヨーロッパの軍事に関する本、短くも眩く輝いたオットー3世の伝記、中世ロシアの歴史を扱った一冊、そしてフィッシュ・アンド・チップスからみたイギリスの歴史といってよい本をあげておきたいと思います。

そして年末ギリギリに滑り込んだ北魏史は内容もさることながら、構成もなかなか考えて作ってると思います。そして、色々と考えさせられるのが椿井文書を扱った一冊です。

私のメインサイトアレクサンドロス大王を扱っているので、当然その辺りの本も読んでいます。洋書では最近の研究動向もとりこみ、大王の遠征をそれに抵抗したり反抗した側から見ていこうというheckelの本はなかなか面白かったです。そして最近の大王研究の潮流もふまえ、かなり冷静・抑制的なタッチで大王の生涯とその後の大王像の展開や受容を扱った澤田先生の本はぜひ読んで欲しいところです。

ここまで歴史書メインになっていますが、それ以外も紹介しておきます。アグアルーザ「忘却についての一般論」はストーリーテリングの面白さで重いテーマを軽やかに読ませてくれる本です。ル=グウィン「ラウィーニア」はアエネイスでちょこっとだけ出てくるラウィーニアを主人公に据え、彼女の目からローマ建国伝説を捉え直しており、非常に面白く読めました。

とりあえず、こんなかんじでベストは選びました。来年も面白い本が読めるといいなと思っています。