まずはこの辺は読んでみよう

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レオ・ペルッツ(垂野創一郎訳)「スウェーデンの騎士」国書刊行会

時代はカール12世の時代、軍を離れてスウェーデン王のもとへと急ぐ貴族と泥棒がひょんな事から出会い、しばしともに行動します。しかし貴族から代父のも とへの言伝を頼まれた泥棒は、そこで出会った娘に心を奪われ、さらに領地の惨状を目にしたことで領地を正しく運営し娘と一緒に暮らしたいと考えはじめま す。

そんな彼が執った手段はまず貴族をうまい具合に言いくるめて自分の代わりに自分が送られるはずだった僧正の作業所へ送り込み、一方自分は先ずは盗賊の首領 となって聖職者相手の泥棒を繰り返して金品をある程度蓄え、必要な財宝を手に入れるとそれを解散、今度は貴族になりすまして娘の元へ訪れます。そして娘と 結婚して子供も設け、所領の経営にも成功するのですが、、、、。

立場や性別の違う人達が入れ替わることがきっかけで展開される物語は色々とあると思います。貴族の若者と泥棒を比べると、才能とかたくましさという点では 後者のほうに軍配が上がるかと思います。そんな二人が入れ替わり、泥棒が結局は貴族となり所領の経営を成功させて立て直してしまうという本書のかなりをし める部分は悪漢がのし上がるピカレスクロマンの様相を呈していると思います。しかし、逃れられない運命というものがあるのだと感じさせる結末になっていま す。

そして、すべて読み終えてから本書の冒頭に現れた場面を改めて読み直すと、表の街道をゆく葬列のために娘が「我らの父を」を唱えるという場面はなるほど、 やられたなと思う人が多いでしょう。話の組み立て方がうまいですね。3週間前にロシアとの戦いで戦死していたはずなのに、夜中に度々あっていた父親は何者 だったのか、どちらの父親が貴族なのか泥棒なのかは、読んでみてのお楽しみでしょう。