まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

今年のベスト

今年のベスト本を選んでみました。
正直、絞るのが難しかったです。「侯景の乱始末記」とか、アンドリッチ の短編とかも載せたかったですし、内容の是非は日本史の専門家に任せるとして、武士誕生の物語として面白い「武士の誕生を解きあかす」もよかったです。それに「「姦通裁判」もベストといっていい本でしたし、フェリルの「戦争の起源」も古いとはいえその視点は結構興味深いものがあります。

でもあえて冊数を絞るとこういう感じになりました。

ジョナサン・ハリス「ビザンツ帝国 生存戦略の一千年」
ラーナー・ダスグプタ 「ソロ」
ヨーゼフ・ロートラデツキー行進曲
メアリー・ビアード「SPQR ローマ帝国史」
北村紗衣「シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち」
張愛玲「傾城の恋/封鎖」
蔀勇造「物語アラビアの歴史」
ジョゼ・ルイス・ペイショット「ガルヴェイアスの犬」
貴堂嘉之「移民国家アメリカの歴史」
イヴォ・アンドリッチ「ドリナの橋」
レオ・ペルッツ「どこに転がっていくの、林檎ちゃん」
小笠原弘幸「オスマン帝国

ジョナサン・ハリス「ビザンツ帝国 生存戦略の一千年」とメアリー・ビアード「SPQR」、そして蔀勇造「物語アラビアの歴史」は歴史本で3つ選べと言われたらこれを選ぶというくらいに面白く読めましたし、貴堂嘉之「移民国家アメリカの歴史」と小笠原弘幸「オスマン帝国」も、中国系・日系移民の歴史からアメリカを見たり、スレイマン大帝以後の時代に光を当てたりと、従来の歴史記述とはちょっと違う視点や、従来の歴史の見直しをしているという点で非常に面白かったです。

文学とその関係では、やはり「ガルヴェイアスの犬」は面白かったですし、「ドリナの橋」や「ラデツキー行進曲」も現代文学とはちょっと視点の撮り方などは違えど、大河ドラマという感じで非常に面白かったです。張愛玲「傾城の恋」は中国における恋愛の駆け引きややりとりと訪れる結末への展開が興味深いです。北村紗衣「シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち」は文学作品を楽しんだ女性読者たちの姿や足取りをおいかける一冊です。残された写本を徹底的に調べ、そこからある作品を通じて生まれた人のつながりとその広がりが明らかになるというのが実に面白いです。そして、うっかり忘れていたのですが、年末に読んだレオ・ペルッツは年間ベストに入れなくては。

以上を今年のベスト本として紹介したいと思います。来年はどんな本が読めるのか。