まずはこの辺は読んでみよう

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ヤマザキマリ「オリンピア・キュクロス1」集英社

2020年、真夏の東京でオリンピックが開かれることになっており、開催に向け急ピッチで準備作業を進めているようです。はたして今度のオリンピックがどうなるのかはわからないですが、いまから54年前、1964年の東京オリンピックは戦後日本の復興、高度成長の一幕として記憶されています。

そんな時代に、いまからおよそ2400年ほど前のギリシア人がやってきたらどうなるだろうか、そして彼が目にした東京の様々なもの及びオリンピックがどのような影響をあたえることになるのか、それを漫画にしたのが本作です。

主人公デメトリオスはヘタな壺絵(少女漫画チックな瞳の登場人物をえがいています)を描くツボ職人、しかし身体能力抜群なため、本人はあまり乗り気でないもののなにかと目をつけられ、困った状況に追いやられることになります。そんな彼がちょっとしたきっかけで1964年の東京へやってきて、そこで町内運動会に参加したり、盆踊り大会を楽しみ、そしてなぜか東京オリンピックで走るはめになるという話が描かれていきます。

大ヒット作「テルマエ・ロマエ」と物語の展開自体は同じです。古代世界の人間が現代日本に突如現れ、そこで見たことや触れたことを古代世界に持ち帰って、彼の生きる世界に活かしていく、今回はお風呂や水回りのものでなく、運動会や盆踊り大会、そして近代スポーツといったものがとりあげられています。これからどんなネタを発掘し、絡めていくことができるのか、見守りたいと思います。また、今作では主人公と現代日本の橋渡しをする人物を最初から設定していますが、この人物もまた得体の知れないところがあります。一体何者でしょうか。そこもいずれ明らかになるのかも知れません。

三波春夫の歌をたのしみ、円谷幸吉との出会いに感銘を受ける、そんな経験をデメトリオスが古代ギリシアの故郷のポリスに持ち帰り、それによって彼の住むポリスとその周辺世界には変化が生じ始めます。しかし、そのような動きを面白く思わない人々もいるようで、次巻以降どうなっていくのか、気になるところです。はたして1964年の日本が古代ギリシア人に何をもたらすのか、どんなものが紹介されるのか、そこにも興味がわいてきます。高度経済成長期の日本は古代ギリシア人にはどう見えるのか、そしてそれを見たデメトリオスは何を考えるようになるのか、第2巻以降を楽しみに待つことにします。