まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

2018-01-01から1年間の記事一覧

吉川忠夫「侯景の乱始末記 南朝貴族社会の命運」中央公論新社(中公新書)

最近、南北朝時代の歴史が流行っているらしく、いろいろ本が出ているようです。そういうわけで、かなり古い本ですが、読んで見ました、、、 というどうしようもない話はさておき、中国史において五胡十六国の動乱が華北で続き、北朝ができるまでの時代、江南…

6月の読書

6月になりましたが、今月はこんな本を読んでいます。 ヨーゼフ・ロート「ラデツキー行進曲」は岩波「文庫」で、新書ではありません。最初に書いたときに間違えていたので、念のため。 天野忠幸「松永久秀と下克上」平凡社:読了 プルタルコス「モラリア4」…

メアリー・ビアード(宮崎真紀訳)「SPQR ローマ帝国史 I , II」亜紀書房

*訳者のお名前はたつさきなのですが、文字化けするため崎で表記しています。すみません。 古代ローマ史に関する本は世の中に多くあり、それらはローマがイタリア半島の一都市国家から地中海帝国へと発展する過程、そこで活躍した偉人たちの話やローマの勝利…

西成彦(編訳)「世界イディッシュ短篇選」岩波書店(岩波文庫)

イディッシュ語という、東欧圏のユダヤ人たちの間で使われていた言語があります。いまでは使用者もだいぶ減ってしまいましたが(アメリカでは英語、イスラエルではヘブライ語に変わった人たちも結構いるとか)、世界各地に移住した東欧圏ユダヤ人の間で使わ…

秋山晋吾「姦通裁判 18世紀トランシルヴァニアの村の世界」星海社(星海社新書)

18世紀後半、トランシルヴァニア侯国のある村で、姦通裁判がおこりました。夫が妻と自分のいとこを訴えるというこの姦通裁判の証言聴取記録がのこされており、それをもとにこの出来事の真相はどのようなものだったのかを探っていく一冊です。 しかし、姦通事…

5月の読書

5月になりました。5月はこのような本を読んでいます。 メアリー・ビアードのローマ史本の翻訳が出るとは思っていませんでした。面白いので是非。 メアリー・ビアード「SPQRローマ帝国史 I,II」亜紀書房:読了 竹中亨「ヴィルヘルム2世」中央公論新社(中…

南川高志(編著)「B.C.220年 帝国と世界史の誕生」山川出版社(歴史の転換期1)

歴史の書籍および学習参考書でお世話になった人も多い山川出版社から、世界史のシリーズ物が久々に出ました。「歴史の転換期」というシリーズの元、ある年代およびその前後を対象として、「世界」のあり方を示していこうというもののようです。 この紀元前22…

吉武純夫「ギリシア悲劇と「美しい死」」名古屋大学出版会

「美しい死(カロス・タナトス)」という表現がギリシア文学にはあるようです。三島由紀夫があこがれた、古代ギリシアにおける「美しい死」とは一体何なのか、美しいなどの意味を持つギリシア語である「カロス」で形容される死とは何か、その意味がどのよう…

北村紗衣「シェイクスピア劇を楽しんだ女性たち 近世の観劇と読書」白水社

英文学というとシェイクスピア、良くも悪くもそのようなイメージが定着しているように思います。用いられるセリフが格言のような形で使われることが多く、教養として必須であるという人もいます。また、日本の英語教育について何か文句を言いたい人が、「シ…

4月の読書

4月になりましたが、4月はこのような本を読んでいます。 山川出版社から、「歴史の転換期」というシリーズが刊行され始めました。第1回配本は紀元前220年、そのほかの巻をみると、378年、750年、1187年、1348年、1571年、1683年、1789年、1861年、1905年…

松浦義弘「ロベスピエール」山川出版社(世界史リブレット人)

1789年に始まったフランス革命は、人によっては「劇薬」という表現を使うほどの出来事でした。近代社会の原理として機能する様々なものが現れ、よその国や地域にも大きな影響を与え、それは現代世界にも継承されています。一方で革命において大きな変化が起…

佐藤真理恵「仮象のオリュンポス 古代ギリシアにおけるプロソポンの概念とイメージ変奏」月曜社

古代ギリシア語に「プロソポン」という単語があります。この言葉は第一義的には顔、そして前面や正面といった意味があり、そのほか顔つきや容貌、仮面、役柄やキャラクター、登場人物、さらに人、存在、法的人格、人などの特徴という意味があり、神学では位…

Peter Thonemann「the Hellenistic Age」Oxford Univ.Press(Very Short Introductions)

アレクサンドロスの東征により広大な世界が1人の支配下に入るも、彼の死後の後継者戦争によって複数の国に分裂していきました。そして、地中海東岸からアフガニスタンのほうにまで広がる世界がギリシア人の活動する舞台となり、ギリシアの文化もよその地域に…

3月の読書

3月になりました。今月はこんな本を読んでいます。 佐藤真理恵「仮象のオリュンポス」月曜社:読了 エリック・H・クライン(安原和見訳)「B.C.1177」筑摩書房:読了 石原比伊呂「足利将軍と室町幕府」戎光祥出版:読了 黒嶋敏「秀吉の武威、信長の武威」平…

ジェームス・ロバートソン(田内志文訳)「ギデオン・マック牧師の数奇な生涯」東京創元社

スコットランドのある出版社に、一つの奇妙な原稿が持ち込まれました。それは半年前に失踪した牧師ギデオン・マックが書き残した手記がもちこまれました。マック牧師は失踪する直前、スコットランドにおいてちょっとした有名人となっていた人物でした。 崖か…

エドヴァルド・ルトヴェラゼ(帯谷知可訳)「アレクサンドロス大王東征を掘る」NHK出版(NHKブックス)

昨年でた、森谷公俊「アレクサンドロス大王 東征路の謎を解く」(河出書房新社)はイランにおけるアレクサンドロス東征路の一端を明らかにしようとした一冊でした。アレクサンドロス大王の東征ルートについて検討した本が他に何かあったと記憶していましたが…

ラーナー・ダスグプタ(西田英恵訳)「ソロ」白水社

物語のはじまりは現代のブルガリア、もうすぐ生涯を終えそうな盲目の老人ウルリッヒが自分の生涯を回想しています。鉄道技師の父と、政治や社会など様々なことに関心を持つ母の間に生まれた彼は、幼い日には音楽に興味を示しながらも音楽を諦めることとなり…

2月の読書

2月はこのような本を読んでいます。 ジェームス・ロバートソン「ギデオン・マック牧師の数奇な生涯」東京創元社:読了 エドヴァルド・ルトヴェラゼ「アレクサンドロス大王東征を掘る」NHK出版(NHKブックス):読了 ラーナー・ダスグプタ 「ソロ」白水社:読…

ジョナサン・ハリス(井上浩一訳)「ビザンツ帝国 生存戦略の一千年」白水社

バルカン半島からアナトリアにまたがり、時には東地中海にも領土を持っていたビザンツ帝国、この国については、怠惰、道徳的退廃、臆病、内紛、教義論争や尚古趣味にかまけ国の強化を怠ったと言った感じで捉えられることがあります。ギボンの「ローマ帝国衰…

戸崎哲彦「柳宗元」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史で古文復興運動、唐宋八大家といったことを習うと、柳宗元の名前は必ず登場します。しかし、それ以外で柳宗元が何をやった人なのかと言われてもよくわからないという人が多いのではないかと思います。 本書は、そんな柳宗元の生涯をたどりながら、彼が…

1月の読書

2018年を迎えました。今月はこのような本を読んでいます。 1月28日の毎日新聞書評で、森谷公俊「アレクサンドロス大王 東征路の謎を解く」が塩野七生「ギリシア人の物語3」とセットで紹介されていました(評者は本村凌二先生)。塩野七生を呼んだら、こっち…