まずはこの辺は読んでみよう

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近藤和彦「近世ヨーロッパ」山川出版社(世界史リブレット)

かつてはユーラシア大陸の西の辺境の、決して豊かとは言い難い世界だったヨーロッパが、近現代においては世界の覇権を握り主導していきます。しかし。どのようにして近代に覇権を握る礎が築かれてきたのでしょうか。

本書では、1500年頃から1800年ころをヨーロッパ史における「近世」と位置付けます。イタリア・ルネサンスが終わりに近づくなか、宗教改革がはじまり、「カトリック世界」としてのヨーロッパがカトリックプロテスタントに分かれていくことや、宗教戦争のさなかに国家のあり方を模索し、主権国家体制が確立していくことが触れられています。

そして、1500年から1800年という近世300年の分水嶺として三十年戦争ウェストファリア条約、1685年のナント王令廃止から九年戦争(アウクスブルク同盟戦争。ルイ14世とそれに対立する諸国、そしてユグノーディアスポラの連携した戦い)をあげているところは、他の本ではあまり見かけない視点ではないでしょうか。主権国家体制が確立していくことと、その状況下で国際関係が大きく変わっていったことが関係しているようです。

さらに、人文主義や科学革命といった過去の知の継承と非ヨーロッパ世界との接触というタテとヨコのつながりの中から生まれた総合科学としての啓蒙、積年の対外貿易での赤字への対処のなかで進んだ産業革命、植民地経営、通商条約締結が次の時代の礎となったことも扱われいます。

近世ヨーロッパ300年の歴史が最近の研究成果をもとにコンパクトにまとめられ、なおかつ読みやすいです。近世ヨーロッパについてざっくりと知りたいという人にはまずこれを進めておけば良いのではないでしょうか。