まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

姜尚中(総監修)「アジア人物史3 ユーラシア東西ふたつの帝国」集英社

人物を通じてアジアの歴史を見る「アジア人物史」シリーズの第3巻が出ました。刊行ペースが少しゆっくりに成、2ヶ月に1冊くらいのペースになってきています(予定通りのようですが)。この巻では6世紀から11世紀頃というはばで、唐とイスラム帝国が栄えた時…

小野寺拓也・田野大輔「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」岩波書店

SNSの発達によりいろいろな人が言いたいことを言いやすい環境ができあがっていくなか、世間で言われていることとはちょっと違うことをいうと人目を引きやすいことは多いようです。とくに「〜の真実」「本当の〜」等と銘打って本を出すと、それを見てその通り…

9月の読書

もう秋になりました。読書の秋とは言いますが忙しいとなかなか進みませんね。 9月はこんな本を読んでいます。なお8月に読んで感想を書ききれずたまっているため、それを書いた後で9月の本については感想を書くかなと。 石田真衣「民衆たちの嘆願」大阪大…

三佐川亮宏「オットー大帝ー辺境の戦士から「神聖ローマ帝国」樹立者へ」中央公論新社(中公新書)

オットー大帝(オットー1世)というと、世界史では神聖ローマ帝国の初代皇帝と言うことでその名が出てくる人物です。レヒフェルトの戦いでマジャール人(なお、本書では自称であるマジャール人ではなく史料の記述に従いハンガリー人として表記しています)を…

千葉敏之(編著)「1348年 気候不順と生存危機」山川出版社(歴史の転換期)

山川出版社から刊行されてきた「歴史の転換期」シリーズもついに完結の時を迎えました。扱われるのは1348年、中世ヨーロッパで黒死病(ペスト)の大流行を迎えた時代であり、そのほかの地域でも疫病や気候不順、相次ぐ戦乱が見られた時期でした。いっぽう、…

8月の読書

8月になりました。暑い日々が続く中で読書が進むのかどうかはわかりませんが、こんな感じで読んでいます。 姜尚中(総監修)「アジア人物史3 ユーラシア東西ふたつの帝国」集英社:読了 小野寺拓也・田野大輔「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」岩波…

小嶋茂稔「光武帝」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史リブレット人の新刊は後漢の建国者、光武帝こと劉秀をあつかいます。日本史,中学歴史で奴国の使者がやってきたときに「漢委奴国王」印を授けた皇帝として光武帝(劉秀)は登場するので,どこかで名前は聞いた、習ったという人がほとんどのはずです。…

マギー・オファーレル(小竹由美子訳)「ルクレツィアの肖像」新潮社

物語の出だしは1561年、主人公であるルクレツィアが死んだ年、人里離れたところにある砦を舞台に夫と二人きりの食卓で彼女は夫に殺されることを予感しながら卓についているところから始まります。その後、過去の話と砦での様子が交互に入れ替わるように展開…

姜尚中(総監修)「アジア人物史4 文化の爛熟と武人の台頭」集英社

アジアの古代、中世の歴史を見ると、外戚が台頭する時代や武人の台頭が見られる時期が見られます。日本史では摂関政治や院政期の武士の台頭と平氏政権、鎌倉幕府の登場と言う具合で現れてきます。またこの時期は文化的に東部ユーラシアでは独自の文字を発展…

姜尚中(総監修)「アジア人物史11 世界戦争の惨禍を超えて」集英社

アジア人物史の11巻は20世紀、世界戦争に関わる時代に生きた人々を扱いつつ歴史を描こうとしていきます。内容構成を見ると20世紀前半、第2次世界大戦前の時代が中心となる人物と、第2次世界大戦後の世界での活動が中心となる人が色々と混ざっています。また…

キム・イファン、パク・エジン、パク・ハル、イ・ソヨン、チョン・ミョンソプ(吉良佳奈江訳)「蒸気駆動の男」早川書房

「スチームパンク」というと、内燃機関が存在せず蒸気機関により様々なものが動く世界を舞台に展開されるSFのジャンルということで理解していいのかと思います。イギリスのヴィクトリア朝なんかがよく出てくるところでしょうか。しかし本書では蒸気機関に…

バート・S・ホール(市場泰男訳)「火器の誕生とヨーロッパの戦争」平凡社(平凡社ライブラリー)

ヨーロッパの歴史を見ていくと、中世末期に火器が使われるようになり騎士の没落が進んだといった記述が教科書などでみられましたし、今でもそのようなイメージが強いと思われます。火器の使用は14世紀初めには実現していますが、いきなりそれによって火器が…

7月の読書

7月になりました。 感想をため込んでいるものをアップしてから7月に読んだ本の感想は書くことになります。 結構ためているのでいつになるやら。 永田雄三「トルコの歴史(上)」刀水書房:読了 マギー・オファレル「ルクレツィアの肖像」新潮社:読了 姜尚中…

上半期ベスト

2023年も半分が終わりますが、ここまでのベストを掲載します。なおここに掲載した本のなかで、2冊ほど感想がないものがありますが、感想は書き上がり次第7月にアップします。 今回は12冊です。 バート・S・ホール「火器の誕生とヨーロッパの戦争」平凡社(…

諫早直人・向井佑介(編)「馬・車馬・騎馬の考古学 東方ユーラシアの馬文化」臨川書店

前近代世界のユーラシアの歴史を考えるとき、馬及び騎馬遊牧民の存在が重要であると言うことはつとに指摘されてきています。騎馬遊牧民の国家が広大な領域を支配し、交易を活発化させたり、農耕民の世界との間で様々な交渉がみられたことも世界史でよく触れ…

姜尚中(総監修)「アジア人物史10 民族解放の夢」集英社

アジア人物史10巻は19世紀から20世紀、帝国主義の時代にアジアの人々がいかに対応していったのかを,非常に広い範囲の人物を取り上げながら描いていきます。扱われる人物の幅の広さは他の巻と同様に非常に広く、政治に関係した人物だけでなく、思想・文化に…

6月の読書

6月になりました。思ったほど本を読めなかった5月からどう変わるか。 こんな感じで本を読んでいます。 イ・ソヨンほか「蒸気駆動の男」早川書房:読了 姜尚中(総監修)「アジア人物史4」集英社:読了 バート・S・ホール「火器の誕生とヨーロッパの戦争」…

ディオドロス(森谷公俊訳註)「アレクサンドロス大王の歴史」河出書房新社

20世紀末から21世紀の日本でアレクサンドロス研究を担ってきた森谷先生は最近大王に関する史料の邦訳をまとめて単行本に出したり、東征路の実地検分を元にイランでの遠征路などを復元しようとするなど、様々な活動を展開しています。そうした活動の一つとし…

5月の読書

5月になりました。こんな感じで本を読んでいます。4月に読んだけれど感想を書いていない本について感想をまとめるかもしれませんが、先ずはこういう所から。 姜尚中(総監修)「アジア人物史11」集英社:読了 姜尚中(総監修)「アジア人物史10」集英社:読…

杉本陽奈子「古代ギリシアと商業ネットワーク」京都大学学術出版会

古代ギリシアのポリス世界というと、武装自弁で軍役を果たす市民が政治に参加する世界として知られています。そんな市民の多くは土地を持ち、農業を行う、あるいは商工業を営むと言った形で生計を立てている者が多く見られます。しかし、商業活動に関わる、…

新見まどか「唐帝国の滅亡と東部ユーラシア」思文閣出版

唐の歴史は安史の乱の前と後で大きく代わると言うことは言われています。前半の頭部ユーラシアの「世界帝国」という感じだった時と比べ、後半になると唐は藩鎮の割拠や対外的劣勢などのなか、中国型王朝へと転換していくと言うことが言われています。人によ…

ローラン・ビネ(橘明美訳)「文明交錯」東京創元社

新大陸と旧大陸の結びつき、世界史の始まり、大航海時代とその後の動きについて伊はそのように言われたりもしています。一方でこの過程を通じ、ヨーロッパにより新大陸のアステカ帝国、インカ帝国が征服され、さらに新大陸の先住民が疫病により打撃を受けた…

4月の読書

新年度を迎えましたが,皆様いかがお過ごしでしょうか。 3月はかなり色々読んで感想を書きましたが、4月はどうなりますか。とりあえずこんな本を読んでいます。 マアザ・メンギステ「影の王」早川書房:読了 杉本陽奈子「古代ギリシアと商業ネットワーク」京…

姜尚中(総監修)「アジア人物史2 世界宗教圏の誕生と割拠する東アジア」集英社

アジア人物史2巻は2世紀から7世紀、それも仏教の展開に関係する南アジアの事柄(上座部仏教、大乗仏教の成立や発展)と、東アジアを中心とした内容となっています。扱われる人物もナーガールジュナ、ブッダゴーサ、ムハンマドといったところをのぞくと、すべ…

森部豊「唐 東ユーラシアの大帝国」中央公論新社(中公新書)

中国の歴史のなかで、唐の時代というと日本との関係では遣唐使の派遣、様々な文物の受容、鑑真の渡来など、さまざまなことがあがるかと思います。また、現代においても李白や杜甫の漢詩は漢文の授業で習ったりもしますし、「貞観政要」をリーダー論の書籍と…

井上文則「軍と兵士のローマ帝国」岩波書店(岩波新書)

古代ローマの軍事を扱った書籍はいくつかありますが、共和政期の市民軍からマリウスの軍制改革により職業軍人化の道が開け、内乱の1世紀をへて帝国が樹立されると常備軍となり、元首政期、常備軍化した軍団兵は辺境を中心に配備されたといった、帝政前期のあ…

シオドラ・ゴス(原島文世訳)「メアリ・ジキルと怪物淑女たちの欧州旅行(1ウィーン篇、2ブダペスト篇)」早川書房

ジキル博士の娘メアリと、その妹でハイドの娘ダイアナ、そのほかマッドサイエンティストの「娘たち」の活躍と「アテナ・クラブ」の結成を描いた「メアリ・ジキルとマッドサイエンティストの娘たち」、その最後の方ででてきたヴァン・ヘルシング博士の娘とい…

大月康弘「ユスティニアヌス大帝」山川出版社(世界史リブレット人)

世界史リブレット人の新刊は東ローマ皇帝ユスティニアヌスを取り上げています。世界史でも「ローマ法大全」の編纂、ローマ帝国の領土の再征服戦争、そしてハギア・ソフィア聖堂(これは再建ですが)と言ったことが取り上げられる人物です。 本書では、皇后テ…

姜尚中(総監修)「アジア人物史1 神話世界と古代帝国」集英社

集英社のアジア人物史の1巻は古代世界を扱います。各地の神話の部分から話を始めますが、ここで結構ページをさいています。その後西アジア、東アジア、北アジア、南アジア、東南アジアといった各地の人物を扱いながら歴史を書いていきます。 やはり、史料的…

3月の読書

3月になりました。年度末ですね。 今月はこんな感じで本を読んでいます。 姜尚中(総監修)「アジア人物史2 世界宗教圏の誕生と割拠する東アジア」集英社:読了 森部豊「唐 東ユーラシラの大帝国」中央公論新社(中公新書):読了 井上文則「軍と兵士のロー…