まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

ピエルドメニコ・パッカラリオ、フェデリーコ・タッディア(浅野典夫監修・森敦子訳)「だれが歴史を書いてるの?」太郎次郎社エディタス

歴史を書くと言うことについて、歴史学入門といった本は数々あります。しかし基本的にそれは大人向けのものがおおいと言う具合でした。しかし、本書は児童文学作家が本職の歴史研究者の監修を受けつつ,子どもでも分かるように歴史学についてまとめています。

歴史はどこから始まるのか、史料とは何か、重要な出来事とは何か、女性や子供、少数民族などは歴史においてどう扱われてきたのか、歴史は勝者が作るのかなどなど、歴史に関する様々な疑問がわかりやすく書かれています。

さらに、最近の動向(文化の盗用とかジェンダー)にも目が行き届いていますし、歴史というと政治史がおおくなるなか、権力とはなんだろうか、歴史が変わるとはどう言うことか、歴史を未来に残すにはどうすればいいかといったことにもふれています。

本書では歴史を学ぶにあたり重要な事柄が非常に平易な語り口でわかりやすく書かれています。児童書として限定してしまうには惜しい内容ですし、日本でこれまで描かれてきた類書を読む前にまずこれを読んでおくと歴史を研究したり学ぶことの意味がよりわかりやすくなるのではないかと思う内容です。

歴史というと、どうしても語句や年号の暗記が多いという印象が強く残っている人が多いと思います。また、大学で歴史学専攻となると史学概論で歴史学の歩みや歴史学はどのような学問なのかということは教わりますが、それ以前に歴史がどのようなものなのかを教える場というのは正直なところないと言っても良いでしょう。

何を語り、何を忘れるか、それを選びながら紡がれているのが歴史というものであること、歴史は一つでなく多くの歴史が存在すること、過去にどう言うことがあり、それが今にどう繋がっているのかを考えていく、歴史の読み方はいろいろあり、それに伴い様々な過去が立ち現れる、なぜどうしてこうなったのかと言うことに対する答えの一つである、本書ではこのようなことが扱われます。

歴史を事項の暗記でなく、歴史的にものを考える、そのためにどのようなことを意識しておくべきなのか、まず小学生などのレベルであればこのくらいは知っておくといいと思う内容をまとめた本だと思います。これを読んでから、さらに先に進むと、歴史的に考えると言うことがどう言うことかもわかるのかもしれません。