まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

岩明均「ヒストリエ」第11巻、講談社

岩明均ヒストリエ」の10巻がでたのが2017年春のこと。それからまつこと2年強、11巻がでました。その間、連載も結構休載が多く、再開されるのは2019年の秋らしいというスローペースですが、ようやく単行本が出て一安心です。

それはさておき、11巻はだいたい次のような内容になっています。

・Youは何しに?と聴きたくなる新キャラ登場。お前の心はどこにある?
・フィリポス2世による上部マケドニア統合の光と陰。
・宮廷ものによくある展開がマケドニアでも発生。エウリュディケは生き残ることができるか?
・名探偵エウメネスの事件簿。
・さあ、ネオプトレモス、カッコ良いところを見せるときがきたぞ。
・しかし王妃は相対する謎の男になにやら興味がおありのご様子。どうなる?

前巻ではエウリュディケがフィリポスに嫁ぐことになり、エウメネスがなんか色々やる気をなくしている状況で話が終わりました。そこから今回は突如新しいキャラクターが登場します。アレクサンドロス 王子をやややさぐれさせ、体格をよくした感じのこの男の登場がマケドニアに色々な事態を引き起こしそうな予感がします。

さらに、この男の過去の経歴がかたられるのですが、フィリポス2世による上部マケドニアの統合のなかでどうしてもうまく立ち回れなかった者がいたであろうことは何と無く想像がつくところです。西部のイリュリアなどとの関係が深い地域だけに、皆が皆マケドニア王の支配を喜んで受け入れた訳ではなかったでしょう。その辺りの様子が描かれており、興味深く読みました。そして、フィリポスの元で強大化したマケドニアの内情がうかがい知れる描写も色々とありました。新参者たちと名門の大貴族の軋轢が果たしてどのような形で現れてくるのか。

そして、今回の新キャラにペルディッカスとレオンナトスに関するエピソードを絡めてくるというのが、この後の歴史的展開を考えるとうまいなあと思います。この新キャラに対する2人の反応もさることながら、この物語の中でこの後の歴史にどのように絡めていくのかが楽しみです。

一方、エウリュディケが王妃として嫁いできた事に対しオリュンピアスはよく思っておらず、宮廷もの、後宮ものによくあるような展開ではありますが、彼女を排除しようとする動きを発動させるに至っています。自分が好きだった女性が危機にさらされる状況で彼女を守りたいなら、エウメネスは書記官を辞められないし、辞めてはいけないところです。この後の歴史の展開を知っていると、なかなか辛い所ではあります。そして、その辺りをフィリッポス王も見越して、今回の婚姻が行われたのかなという感じもしてきます。エウメネスの王の面前で発した極めて無礼な台詞も、そういうことがあって発せられたのだろうと考えると、極めて筋が通っているように思えます。

この後の大事件というと、フィリポス2世暗殺事件ですが、それに向けて、エウメネスも含めた登場人物たちがどのように関係を持ちながら歴史の流れが描かれていくのかが楽しみではあります。自分の身が危険な状況にあるにもかかわらず、オリュンピアスが謎の新キャラに対し、並々ならぬ興味を示すところで話が終わっていますが、彼をどのように使っていくのでしょうか。そこのところが気になります。もっとも、最近の連載ペースを考えると次の単行本が出るまで2年以上待たされることになりそうです。はたしてエウメネスボスポラス海峡を超えられるのでしょうか。