まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

イスマイル・カダレ「夢宮殿」東京創元社

ある帝国(おそらく19世紀前半頃のオスマン帝国だろうと思われます。それを窺わせる描写があるので)に、夢を収集し、選別し、それを解釈する「タビル・ サライ」という役所が存在します。主人公のマルク・アレムはそこで勤めることになり、はじめは夢の選別、やがて解釈、そして…、どんどん出世していきま す。なぜ出世するのかはよくわからないまま、彼は上へと上り詰めていくのですが…。

タビル・サライの描写に「未来世紀ブラジル」の役所のような感じがするという感想もネット上で見かけましたが、確かに映像で表現するとしたら、あれが一番 イメージしやすいとおもいます。主人公の職場の雰囲気はあんな感じですし(建物の雰囲気、そこにいる人たちの様子含めて)。

この作品も含めて、カダレの作品を読んでいると、ナショナリズムに対する意識というものがかなり感じられます。アルバニアを題材にした作品の場合、「アル バニア」及び「アルバニア人」意識について触れている箇所も見かけますし、この作品の場合には国民の再生が「大錯乱夢」の先頭に立つ物として取り上げられ ていたりします。かつてソ連留学を経験し(そのときの経験をもとに「草原の神々の黄昏」を書いた)、祖国を離れ亡命しなくてはいけなかったという経歴が、 そういったことについて度々触れることになる一因となっているのかもしれませんね。