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しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

松浦義弘「ロベスピエール」山川出版社(世界史リブレット人)

1789年に始まったフランス革命は、人によっては「劇薬」という表現を使うほどの出来事でした。近代社会の原理として機能する様々なものが現れ、よその国や地域にも大きな影響を与え、それは現代世界にも継承されています。一方で革命において大きな変化が起きる過程では流血の事態も発生しています。新しい社会を作り出すにあたり、多くの血が流されたこともあり、フランス革命をめぐる評価も肯定的なものから否定的なものまでいろいろあるようです。

そんなフランス革命の中で、恐怖政治により多くの血を流し、最後は自らもギロチンの露と消えたロベスピエールの評価はまさに賛否両論別れており、現代においてもその扱いは難しいものがあるようです。弁護士から革命に身を投じ、国民公会の時代には革命政府の中心として民衆のためを考えた政策を色々と実施し、男性普通選挙の実現に向けて動くといった一面と、独裁的な権力をもち恐怖政治を行い多くの人々を反革命の陰謀を企むものとしてギロチン送りにした面を併せ持つ彼の生涯をコンパクトにまとめたのが本書です。

革命前のロベスピエールは裁判の弁論では取り立てて過激なことを言うような人物ではなく、体制に対しても否定的な考えを特に持っていたわけではなかったようです。しかし、二項対立や徳など革命の時代に行われた彼の演説の片鱗がすでにこの時代に現れていたことも指摘されています。

また、体格的にもパッとせず、体調を度々崩すこともあり、弁論家としては声量も乏しい彼は、議会の外の一般民衆を巧みに取り込み、世論を味方につけるのがうまく、そのために自分の演説を世間に広めることもおこなっていたことが指摘されています。議会外の民衆を味方に取り込み、その支持を背景に議会でも主導権を握っていったという彼の姿を見ると、現代のポピュリズムの政治家に相通じるものを感じてしまいます。

また、彼の言動を見ていると、何かにつけて「陰謀家」の存在を訴えているようにも見えてきます。自分に敵対的なものをすべて何かしらの陰謀を企んでいるとして、彼らを排除し、ついに独裁的な体制を作り上げていきましたが、絶えず「敵」を設定するところをみても、現代のポピュリズム政治家に通じるところはありそうです。