まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

姫岡とし子「ローザ・ルクセンブルク」山川出版社(世界史リブレット人)

第一次大戦末期、ドイツで海軍の水平反乱が発端となり革命が始まり、帝政が倒れました。その後共和国となったドイツにおいて、スパルタクス団改めドイツ共産党が蜂起しますが失敗に終わり、ドイツ革命が終焉を迎えることになります。本書はドイツ革命において中心人物の1人として関わったローザ・ルクセンブルクの生涯と思想的変遷、彼女の関係者の動向をまとめています。

本書において、彼女がポーランドユダヤ系女性という当時のマイノリティ属性を幾重も重なっている出自であるというところや、知的な面でかなり早熟だった様子が伺えること(これは彼女が育った環境によるのでしょう)、民族という枠組みを超えて社会主義実現を目指していたところ(民族自決に対してはそれゆえに否定的な立場をとっています)、労働者大衆とともにあろうとしたことなどが触れられています。また、彼女の親友だったクラーラ・ツェトキンによる女性解放運動についても触れられています。

非常に強力な論客・活動家はありますが、ローザ自身は抑圧された少数民族に対する理解はあまりないところや、クラーラの能力を過小評価しているようなところがあったり、女性解放運動に対してそれほど評価していないところがあるなど、彼女の限界についても窺い知れる内容が盛り込まれています。全てにおいて完璧な人などいないということがつたわってきます。

彼女は組織の論理や過去の様々な関係に囚われずに自分の主張を論理的に展開していくタイプのようですが、そういう彼女のスタイルを気に食わぬ人々が多くいたことが色々な場面からわかってきます。ローザの活動に対する周りの反応を見ていると、組織や社会で活躍する女性に対する周囲の眼差しや接し方が現代もあまり変わらないように見えます。彼女が生きた時代からすでに1世紀以上が経っているのですが、女性の活動に対する反応の変わらなさをみると、いったい何をどうしたら良いのやらという思いに駆られます。