まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

クレア・キーガン「青い野を歩く」白水社(エクス・リブリス)

白水社から刊行されている「エクス・リブリス」シリーズは、なかなか面白い作品が多いのですが、アイルランドの若手作家の手になるこの短編集も期待に違わぬ面白い本でした。

過去から続く(あるいは過去にあった)何かが確実に終わりを迎え、そのことからくる哀愁と、その先にある、幸せなのか不幸せなのかは全く分からないけれど も、来るべき何か新しい物への予感を感じさせる作品が多いように感じました。何かが終わり・何かが始まる、その時に感じる寂しさと期待感が混ざり合ったよ うな気持ちが後を引く、そんな短編集です。

表題作の「青い野を歩く」のほか、「森番の娘」、「波打ち際で」といったあたりはまず読んで欲しいですし、他の短編も読み応えがあります。「長く苦しい 死」を読むと、作家のささやかな復讐ってかんじですが、歴史書で特定の人物を痛罵したり、筆誅を加えようとする人も、何か似たような心理状態に置かれてい るんでしょうか。