新宿駅東口改札を出て徒歩十数秒、そこに「ベルク」というお店があります。どのようにカテゴライズしたらよいのか、一寸考えてしまうのは、私はもっぱらここではビールを飲み(時々水出しアイスコーヒーをのんだりしていますが)、パンを食べ、エネルギーを充填していくという過ごし方をしていますが、ここにはワイン、日本酒もあり、カフェなのか飲み屋なのかビール屋なのか、簡単にはカテゴライズできない何かがあります。
本書はそんな凄いお店「ベルク」の店長がつづった、新宿駅改札側で20年近い時を積み重ねるなかで、ベルクという唯一無二の店ができあがっていったその過程が書かれるとともに、個人店を経営するとはどういうことなのかを考えさせられる内容が含まれています。チェーン店とことなり、個人店では店を繁盛させるための努力はすべてを自分たちにかかってくるという厳しさがあります(その辺は著者も述べています)。しかし、読んでいると食材探しから機械探し、さらに店舗の形態にいたるまで、自分たちで考えて決めていくことの厳しさだけでなく、楽しさも感じさせる作りになっています。
本書で取り上げられていることは、接客はきちんと誠実にとか、食品はきちんとしたところから仕入れる、コーヒーはきちんと淹れる(機械のマイナスをまめでカバー等々)、そういったごくごくまっとうなことですが、それをやり続けることが大変なのだと言うことは失敗する飲食店がいっぱいあることからよくわかるのではないでしょうか。
現在、ベルクは家主のルミネエストから退去を迫られています。あれだけ繁盛している店を追い出したがる家主の思惑は正直なところ理解不能ですが、10月6日付のベルクのブログの記事を見ると、とにかく追い出したいと言うことが先にあるのでしょう。駅ビルの店舗の構成を見ると、若者向けだなあとはおもいますが、そう言ったそうの人々にこび売ってお金を搾り取るのが商売だと思っている人には本書で書いてある内容は理解できないかもしれませんね。