まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

和田春樹「レーニン」山川出版社(世界史リブレット人)

20世紀という時代に大きな衝撃を与えた、良きにつけ悪しきにつけ世界的な影響を及ぼした出来事というと、やはりロシア革命は外すことはできないとおもいます。本書は、そのロシア革命の指導者であったレーニンについてのコンパクトな伝記です。レーニンの生い立ちから若かりし日々、社会主義者としての活動開始と国外亡命、そしてロシア革命とソヴィエト=ロシア建設という54年の生涯をまとめています。

興味深いところをいくつか見ていくと、モンゴル系やユダヤ系の血を引いているとされ、旧ソ連時代には情報統制がおこなわれていたというレーニンの出生にまつわる話からは、「ロシア人」として単純にまとめて語るには難しい彼のルーツ、育った環境などなかなか興味深いところです。

そのほか、興味深いところは、第一次世界大戦が始まり、レーニンが「帝国主義」を著したり、ドイツの戦時統制から社会主義のあり方を考えるなど思想を形作る過程にかなりページを割いていることでしょうか。それまではなんとなく漠然としていた帝国主義社会主義についてのレーニンの考え方が、ブハーリンの論に触れてから色々と発展していった様子がわかるようにまとめられています。ブハーリンの存在感の大きさを知ることができる一冊です。

レーニンに限らず、この時代の活動家たちは基本インテリだったりしますが、自分の認識力を鍛え直そうと思ったレーニンがやったことが、ヘーゲル「大論理学」を読むというところが、発想のスケールが平凡な人間とはあきらかに違いますね。そして、ソヴィエト政権を樹立してからの自分と対立する勢力との苛烈な対応、晩年の政治局員に対する極めて厳しい評価など、この人は自分にも他人にも厳しそうな人のような感じもしますが、どうだったのでしょうか。