まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

渡辺和行「ド・ゴール 偉大さへの意志」山川出版社(世界史リブレット人)

ド・ゴールというと、フランスの政治家として良く出てくる人物であり、現在でもフランスの空港にその名がつけられていたりする人物です。世界史的には第2 次大戦中の「自由フランス」の話や、第2次大戦後の冷戦構造の中で独自路線を歩み、「多極化」の流れに大きく影響したこと、五月革命により結果的に退陣に 追い込まれたことなどが取り上げられています。

本書はド・ゴールをその時代の中に位置づけようとしてまとめられたド・ゴールについての簡潔な伝記です。まず、ド・ゴールの人柄については、かなり傲慢と いうか、かなり強烈な人物であったことが窺えます。それが原因で陸軍大学校の成績が「良」になったり、出世に支障を来したりしています。また、その性格故 に第2次大戦中、英米首脳との関係も極めて厳しい者があったことが明らかになっています。米国にいたっては、ド・ゴールへの反感から1944年春までなん とか彼とは違う人間をフランスの代表者にしようとしていたくらいです。

また、ド・ゴールについてはフランスの偉大さを追求し続けた人物であり、時としてフランスと自分が同化しているところもあったようです。困難な国際情勢の 中で、フランスを世界の大国として復活させようと奮闘する彼の姿が、彼の生きた時代の中でどのように位置づけられるのかを考えてみると面白いかもしれませ ん。

本書では第2次大戦中および戦後のド・ゴールの行動について、限られたページ数で詳しく説明がなされていると思います。自由フランスを樹立してすぐにフラ ンスのリーダーになったのかというとそういうわけではないようで、対外的には米英と、さらにフランス内部の者代としては国内レジスタンスに関わり力を伸ば した共産党との間で衝突したり複雑な関係を造っていたことは知りませんでしたし、そもそもこの時期のド・ゴールの活動について深く踏み込んだ一般書はどれ くらいあるのかと言うところも気になります。このあたりに着いてある程度知る事ができたことは良かったと思っています。

一方で脱植民地化ということで、フランスにとり植民地を持つことが帝国として存続するうえで重要であったこと、植民地化=文明化とかんがえていたこと、そ して左右問わず植民地からから独立すると言うことは文明への批判と挑戦として受け取られていたということのようですが、ド・ゴールアルジェリアの独立を 認めるに到った背景について、もう少し説明があると良かったかなと思っています。ここまでフランスと自己を同一化しているような人が、何だかんだと言いな がら独立を認めてしまっているのは何故なんだろうかと。