まずはこの辺は読んでみよう

しがない読書感想ブログです。teacupが終了したため移転することと相成りました。

ブルガーコフ「巨匠とマルガリータ」河出書房新社

1930年代のモスクワに突如現れた悪魔ヴォラントとその一味(コロヴィエフ、アザゼッロ、ヘルラ、ベゲモート)は様々な騒動を巻き起こしていきます。雑誌の編集長が電車事故で首をはねられて死んだり、彼らを追った詩人が狂乱状態に陥り入院したり、ヴァリエテ劇場の関係者の見に次から次へと不幸が降りかかるだけでなく、モスクワの街でルーブル紙幣が突如外貨に変わるなどの不思議な出来事、これらは彼らが仕組み実行したことでした。

 

以上のような話と、ポンティウス・ピラトゥスに関する歴史小説を書き上げたが全く認められず精神に異常を来してしまった巨匠と彼を支え何とか助けようとするマルガリータの恋愛、そして2000 年前のポンティウス・ピラトゥスとナザレのヨシュア(イエス)の話が交錯しながら進んでいきます。メインとなる内容は前半が悪魔一行の話、後半がマルガリータの話といった具合に分かれていますが、その合間に無罪と知りながらもイエスを処刑してしまい悩まされ続けるポンティウス・ピラトゥスの話が挟み込まれ、20世紀のモスクワと1世紀のユダヤ、現実と異世界が混在したような何とも不思議な話になっています。

 

狡猾で残酷、それでいてユーモラスな悪魔一行の起こす騒動、ハイライトとなる黒魔術ショーと悪魔の舞踏会をエンターテイメントとして楽しみつつ一気に600頁弱を読み切れると思います。色々調べてみると、この作品が書かれた当時のソヴィエト社会だとかキリスト教について理解していないと楽しめないというようなことも言われていますが、それが無くとも奇想天外なエンターテイメントとして楽しめる一冊でしょう。