まずはこの辺は読んでみよう

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ジャンニ・ロダーリ「猫とともに去りぬ」光文社(古典新訳文庫)

光文社から昨年より刊行されはじめた古典新訳文庫では、既に翻訳がある物を新たに訳し直すこともあれば、今まで邦訳されたことのない作品を紹介することもあり、色々な作品が邦訳されています。その中に含まれる1冊が「猫とともに去りぬ」です。

 

イタリアの児童文学作家にジャンニ・ロダーリという人がいて、日本では今まであまり読める本はなかったようですが、彼が過去に書いた短編集がこのシリーズから出されました。「ロダーリ、誰?」と思い、タイトルが映画のパロディで、「猫」になってるのはどういう事かと思って読んでみました。

 

内容は、表題作「猫とともに去りぬ」を含む全16作品からなりますが、中身はというと、ちょっとひねりがきいていて、それでいて最後は読み終わると何となくほっとする話が多いように感じました。あまり詳しいことを書くとネタ晴らしになってしまいそうなので、軽く触れておくと、家に居場所の無くなった元駅長が鉄の柵を越えると猫になっていた…というところから始まる「猫とともに去りぬ」、ヴェネツィアが水没しそうだと言うことで突然魚に変身(どうやるかというと、とにかく努力)する「ヴェネツィアを救え」、突然宇宙人がコンソメの景品としてピサの斜塔を奪おうとする「ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」、眠ると時空を越えてしまい、ピラミッドを造ってしまったりする「チヴィタヴェッキアの郵便配達人」など、変わった話が盛りだくさんです。

 

また、昔どこかで効いたような、そんな感じがするけれどひねりをきかせた「ヴィーナスグリーンの瞳の、ミススペースユニバース」や「社長と会計係」、単に面白いと言うだけでなく何か考えさせられる「カルちゃん、カルロ、カルちゃん」や「おしゃべり人形」のような話も含まれます。

 

不思議な設定や世界が何の違和感もなくふっと自然に入り込んでくるところがなんともいえません。結構気軽に読める本ですし(短編集なので気になるところから読めばよい)、ゲラゲラ笑うというわけじゃないですがくすっと笑ってしまう、そんな話に満ちています。